はじめに
ストックオプション(新株予約権)を発行する際、「権利がいつ失効するか」をあらかじめ明確に定めておくことは、制度全体の健全性と株式の濫用防止の観点から非常に重要です。
特に、退職・死亡・譲渡・上場失敗などの事態を想定した「失効条件」は、契約・登記・原簿整備すべてにおいて実務上不可欠な要素です。
Q1:ストックオプションの「失効条件」とは何ですか?
失効条件とは、一定の事由が発生したときに新株予約権の権利が消滅する条件のことです。
例としては
- 退職・解任時(特に懲戒退職や自己都合退職)
- 契約違反・競業避止義務違反があった場合
- 死亡・相続による承継不可の場合
- 上場不達成・M&A未成立などのイベント未達成時
これらを発行要項・契約書・登記の各所に明示しておく必要があります。
Q2:失効条件を設定しないとどうなる?
設定がない場合、次のようなリスクが生じます。
リスク | 内容 |
---|---|
不適切な人物が権利行使 | 退職後に競業企業へ転職した者がSOを行使するなど |
予期せぬ株主構成の変化 | 死亡・譲渡で会社にとって望ましくない者が株主となる可能性 |
株主間紛争の種に | 上場前後の株主構成に齟齬が生じる恐れ |
→ これらを防ぐには、明確な失効トリガーと自動失効のルールが必要です。
Q3:失効条件はどこに定めるべき?
書類 | 定め方 |
---|---|
新株予約権発行要項 | 条件付き付与の根拠を明記(例:「退職時は未行使分失効」) |
新株予約権割当契約書 | 個別の失効理由・通知方法・異議申立の可否などを詳細に記載 |
登記(必要に応じて) | 行使条件の一部として「退職時は行使不可」などを記載することがある(要登記事項) |
Q4:登記上も「失効条件」は反映しなければならないの?
はい、条件がある場合は登記事項です。
「新株予約権の行使に条件がある場合は、その内容を登記すべき」としています。
したがって、以下のような記載が必要です。
「当該新株予約権の権利者が在職している期間中に限り、行使できる。」
→ 逆に言えば、失効条件を契約で定めているのに登記に反映していないと、対外的に対抗できないリスクもあります。
Q5:設計上の実務ポイントは?
- 「何が失効原因になるのか」を明確に列挙する(曖昧な表現は避ける)
- 「いつ失効するのか(自動 or 通知必要か)」を区別する
- 再雇用や業績未達時の扱いなどを詳細に設計しておく
- 株主間契約・就業規則との整合をとること
まとめ
- ストックオプション制度において、失効条件は制度の信頼性を支える重要な要素
- 登記・契約・社内規程のすべてにおいて、条件の整合性を保ちつつ明確化することが実務上不可欠
- 設計段階から、「失効を前提に制度を設計する」視点が必要
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