ストックオプション(新株予約権)を発行する際、「有償」とするか「無償」とするかで、会社法上の手続きや税務上の扱いが大きく異なります。
特に未上場企業では、有償SOによって報酬性を排除する設計が注目されており、誤解の多いポイントでもあります。
このコラムでは、「有償SO」と「無償SO」の違いについて、会社法上の決議手続、報酬性の有無、税務リスクなどの観点から整理し、実務担当者が押さえておくべきポイントをFAQ形式で解説します。
Q1:有償SOと無償SOの違いとは?
区分 | 有償SO | 無償SO |
---|---|---|
割当時の払込 | あり(例:1個50円) | なし(ゼロ円で取得) |
報酬性 | 基本的になし | 原則としてあり(役務提供の対価) |
行使時の払込 | あり | あり |
税制適格要件 | 適用不可 | 要件を満たせば適用可能 |
Q2:無償SOは必ず報酬性があるの?
無償でストックオプションを付与する場合、それが役員や従業員への経済的利益の提供であることから、「報酬」としての性質を持つと解されます。そのため、会社法上は非公開会社は原則として、株主総会の特別決議が必要となるほか、税務上も付与時または行使時に給与課税される可能性があります。
Q3:有償SOなら報酬性は完全に排除される?
原則として、有償で適正な価額(公正価値)で発行されていれば、報酬とは評価されません。
これは、市場と同等の価値を支払って権利を得たという経済的合理性があるためです。
ただし、形式的に有償としていても、
- 価格が極端に低い
- 実質的に払込が不要(債権相殺などで実質無償)
などの場合には、形式を否認されるリスクがあるため注意が必要です。
Q4:税制適格SOとの関係は?
税制適格ストックオプションに該当するためには、所定の要件をすべて満たす必要があります。
特に以下の要件に注意
- 権利行使価額が発行時の公正価値以上であること
- 譲渡制限が設定されていること
- 所定の届出書が提出されていること
- 権利行使期間が定められていること
Q5:実務での選択基準は?
目的 | 有償SOが適するケース | 無償SOが適するケース |
---|---|---|
報酬性を排除したい | ◯(VC対応、経営者への付与) | ×(要件を満たさないと課税リスク) |
IPO前のインセンティブ設計 | ◯(希薄化管理しやすい) | ◯(税制適格設計が前提) |
会計・税務のリスク低減 | ◯ | △(税務対応が複雑になる) |
まとめ
- 無償SOは、報酬と評価されるため、株主総会決議・給与課税の可能性があるため要確認
- 目的やスキーム全体との整合性を踏まえて、適切な設計を行う必要がある
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