スタートアップや成長企業では、社外のエンジニア・顧問・アドバイザーなどに対してもストックオプション(SO)を活用したいというニーズが高まっています。
しかし、雇用契約でない外部の専門家にSOを付与できるのか?
税制適格SOとの関係や、契約書・登記の注意点など、実務には判断に迷う場面が多く存在します。
本稿では、委任契約・業務委託契約の対象者にSOを発行する場合の論点をFAQ形式で整理します。
Q1:業務委託や顧問にもストックオプションは発行できますか?
はい、可能です。
ストックオプションの対象者は雇用者に限定されていないため、外部人材に対しても新株予約権を発行することができます。
ただし、税制適格SOの要件に照らすと、対象者には制限があります(後述)。
Q2:税制適格ストックオプションは委託先・顧問にも付与できますか?
2024年度の税制改正により、一定の要件を満たす業務委託先等にも、税制適格ストックオプションの付与が可能となりました。
改正前(~2023年度)
- 対象は「発行会社の役員・従業員(社内)」に限定
- 外部の顧問・業務委託先(フリーランス等)は対象外
改正後(2024年4月1日以降の付与から適用)
- 継続的な業務提供者(一定の条件を満たす委託先)も対象に追加
- ただし、形式的な契約ではなく、継続的・実質的に役務を提供していることが必要
【適格対象に含まれる「業務委託者等」の要件(概要)】
- 発行会社または関連会社との継続的な契約関係があること
- ストックオプションの付与時に、継続して業務提供を受けている実態があること
- 所得税法施行令で定めるその他の詳細要件を満たすこと(※今後政令等で明確化)
【注意点】
- この改正により、外部エンジニア・顧問・アドバイザー等にも、税制適格SOを活用できる可能性が生まれました。
- ただし、契約書・実態・報酬とのバランスが問われるため、形式的に対象を拡大するだけでは適格と認められないリスクがあります。
- 登記・評価・保管義務(証券会社等)も従来どおり必要です。
今後、政省令による詳細要件が明確になり次第、企業としては
- 契約書の整備
- 業務実態の記録
- 評価・税務の一体管理
などを適切に整備したうえで制度設計する必要があります。
で
Q4:ストックオプションを報酬として使うことのメリットとデメリットは?
観点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
キャッシュアウト | 現金を使わず報酬を提供できる | 後日税負担が発生しやすい |
インセンティブ性 | 成果連動型の動機づけになる | 成果不達成時に報酬ゼロのリスクあり |
税務 | 行使価格の設定次第では税務上有利 | 設定を誤ると課税リスク大 |
外注先に対して現金の代わりにSOを使いたい場合には、税務・契約・法務のバランスをとった制度設計が必須です。
Q5:形式的に役員や社員として登記すれば、税制適格SOの対象にできますか?
形式上の登記だけでは不十分です。
たとえば、外部の顧問を一時的に非常勤取締役として登記して税制適格SOを付与したとしても、実質的に業務に関与していない場合や対価性が不明確な場合、税務当局に否認されるリスクがあります。
したがって、役員登記や雇用契約の実体があること、実質的な貢献が認められることが前提となります。
まとめ
業務委託先や社外顧問へのSO付与は、法的には可能であり、成果連動報酬として極めて有効な手段です。
しかし、税制適格の対象外となる点や、契約・税務・登記の整合性を確保しなければ重大なリスクも生じます。
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