スタートアップ企業やベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達の場面で、「種類株式とストックオプション(SO)の併用設計」が話題になることが増えています。
しかし、会社法上の整合性や株主間の利害調整など、慎重な設計が求められるテーマです。
本稿では、ストックオプションと種類株式(特に優先株)を併用する際の法務・登記・実務上のポイントを、FAQ形式で整理します。
Q1:種類株式とストックオプションの併用は可能ですか?
はい、可能です。
会社法上、普通株式以外の種類株式(例:取得条項付・拒否権付・配当優先等)と、ストックオプションを同時に発行することに制限はありません。
むしろ、実務では以下のような設計が多く見られます。
- 投資家には優先株式(種類株式)を発行
- 経営陣・従業員には普通株式に転換可能なSOを付与
Q2:種類株式とSOを併用する目的は?
主に以下のような目的で併用されます。
目的 | 解説 |
---|---|
投資家保護 | 種類株式によって、配当優先・残余財産優先・拒否権等を設定し、投資家の立場を確保する |
インセンティブ付与 | 経営陣・従業員には、普通株式ベースのSOを付与し、将来の成長を享受できる仕組みとする |
希薄化調整 | 優先株には転換価格の調整条項を設け、SOによる希薄化を緩和 |
→ こうした設計により、株主構成のバランスを取りつつ、インセンティブと資金調達を両立することができます。
Q3:どの種類株式と相性が良いですか?
特に併用が多いのは以下のタイプの種類株式です。
種類株の類型 | 特徴 | SOとの関係 |
---|---|---|
取得条項付株式 | IPO時等に自動で取得可 | IPO直前の整理に有効 |
拒否権付株式 | 特定事項に拒否権 | 重要事項を投資家が抑える |
転換株式 | 普通株式に転換可 | SOによる希薄化と連動可能 |
配当優先株式 | 普通株より配当が優先 | 経済的権利の優先順位明確化 |
Q4:登記や定款設計で注意すべき点は?
種類株式とSOを併用する場合、定款と登記事項の整合性が極めて重要です。
- 定款には、種類株式の内容を詳細に記載
- SOの行使により交付される株式が「普通株式」である旨を明記
- 優先株式の発行・取得・転換の要件や価格を細かく設定
- SO発行時に「SO行使による普通株式の発行数」を具体的に計算可能にしておく
→ 定款の変更・株主総会決議・発行要項の設計等、各所で整合性の取れた設計が求められます。
Q5:ベンチャーキャピタルからの出資がある場合、SO付与に制限は?
VC出資時には、投資契約や株主間契約でSO発行の事前承認条項が設けられていることが多いため、以下に留意が必要です。
- SOの発行にはVCの同意が必要
- 発行済株式総数に対するSOの割合を制限されることがある
- VC側で転換価格調整条項(アンチ・ディリュージョン条項)を有する場合、SO発行が価格調整を誘発する可能性がある
→ 契約書の事前チェックと、法務・ファイナンス担当との連携が重要です。
まとめ
- 種類株式とSOは実務上併用されることが多く、会社法上も可能
- 定款設計・発行要項・登記・株主間契約との整合が必須
- 特にVCからの出資を受けている場合は、SO発行の影響を多角的に確認すべき
ストックオプション制度と種類株式設計を同時に検討中の企業様へ
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