ストックオプション(新株予約権)を設計する際、「行使期間の設定」は必須の要素です。
しかし、「何年にすべきか?」「退職時の扱いはどうするか?」「変更できるのか?」といった点で、誤解や不備が多い項目でもあります。
本コラムでは、会社法上のルール・実務慣行・トラブル防止の観点から、ストックオプションの行使期間について整理します。
1.行使期間は「新株予約権の内容」として必須の設定項目
会社法上、ストックオプション(新株予約権)には、以下のような内容を定める必要があります。
- 新株予約権を行使できる期間(例:発行日から10年間)
この「行使期間」は登記事項にも該当し、登記簿にも明記されます。
行使期間のない新株予約権は、そもそも法的に有効とされません。
2.何年にすべきか?―実務上の期間設定例
よくある設定パターン(非上場企業)
パターン | 行使期間の例 | 備考 |
---|---|---|
長期インセンティブ型 | 発行日から10年間 | 最も一般的。退職後も行使可とする場合が多い |
リテンション型 | 付与日から5年/退職時に失効 | 在職中に限って行使可能とするタイプ |
成果連動型 | 特定の条件達成から3年間 | IPO、M&A、売上目標達成等を条件とする |
※「発行日から○年」なのか「一定条件達成から○年」なのかで意味が変わります。
3.途中で行使期間を変更できるのか?
原則として、発行後の行使期間変更は可能ですが、極めて慎重に扱う必要があります。
4.退職・死亡時の取り扱いは「行使条件」および「契約」で定める
行使期間自体は登記簿に記載されますが、在職中のみに限る/退職後も一定期間行使可/死亡時に承継可などの細かい扱いは、行使条件および契約書により補完します。
例(契約条項):
「新株予約権者が会社を退職した場合、退職日から起算して1年以内に限り、本件新株予約権を行使することができる。」
→このような「行使制限」「失効条項」こそが、社内トラブル防止の鍵です。
5.よくある実務トラブルと回避策
トラブル | 原因 | 対策 |
---|---|---|
登記できない | 行使期間未設定または形式不備 | 必須登記事項として明記 |
退職者が大量行使 | 退職後の行使可否が不明確 | 契約条項で制限を明記 |
M&A時に行使され損害 | 一括行使条項の不在 | 条件付行使や取得条項の併用検討 |
まとめ:行使期間は「法律・税務・戦略」の交差点
ストックオプションの行使期間は、
- 法律上の必須記載事項(登記事項)であり、
- 契約・運用面でのトラブル抑止機能も持ち、
- 税務・株価評価・IPO戦略とも連動する極めて重要な要素です。
単なる「何年にするか」ではなく、全体設計の中でどのような位置づけにするかを明確にしたうえで設定・明文化する必要があります。
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