はじめに
スタートアップから上場準備企業まで、ストックオプション(新株予約権)制度の導入時期に悩む企業は少なくありません。
「資金調達前?後?」「役員だけ?社員にも?」「制度だけ先に設計しておくべき?」といった実務上の検討ポイントは多岐にわたります。
このコラムでは、企業フェーズごとに見るSO導入のメリットと注意点をFAQ形式で解説します。
Q1:そもそもストックオプションは何のために導入するの?
主に以下の3つの目的で導入されます
- インセンティブ報酬として、役員・従業員に企業成長の成果を還元
- 資金を使わずに報酬を与えることができる(キャッシュアウト不要)
- 採用・定着・リテンションの強化につながる(特にハイレベル人材の確保)
→ したがって、導入のタイミングは「誰に・なぜ与えるか」を明確にできる段階であることが重要です。
Q2:設立初期の企業でも導入できますか?
はい、可能です。
むしろ、創業メンバーや早期参画人材へのエクイティ報酬として、設立直後の導入は理にかなっています。
ただし注意点として
- 将来の資本政策(増資・株式分割等)を見据えた設計であること
- 発行済株式総数とのバランス(希薄化率)を検討していること
→ 設計次第で、VCからの出資条件にも影響を与える可能性があります。
Q3:資金調達後に導入する企業が多いのはなぜ?
- 調達により株価評価の基礎(プレバリュエーション)が明確になる
- 資金により専門家を活用した制度設計ができる
- 投資契約の中でSOプールの確保(例:発行済株式の10〜15%)が求められることがある
→ シリーズA・B前後で導入する企業が多いのは、こうした実務的背景があります。
Q4:上場前(IPO準備期)に導入する場合の注意点は?
IPO直前に導入する場合は、次の点に注意が必要です
項目 | 注意点 |
---|---|
税制適格SOの適用 | 適格要件を満たす設計にする必要がある(行使価格、保管委託等) |
株式の売却制限 | 上場前後のSO行使・売却にはロックアップ等の制限を設けるのが一般的 |
開示・報酬規制 | 有価証券報告書での報酬開示、上場審査での説明責任あり |
→ 証券会社・監査法人と連携しつつ、慎重な制度構築が求められます。
Q5:導入時に制度だけ設計し、実際の発行は後でもいい?
「制度の枠組み(付与方針やSOプール)」だけ先に決め、実際の発行は人材獲得や業績連動のタイミングで行うという企業も増えています。
この場合は
- 株主総会で「新株予約権の発行枠」だけ決議(発行は取締役会に委任)
- 発行要項を定型化しておき、個別付与時にその都度取締役会決議
- 評価や株価は都度見直し(税務・登記対応のため)
まとめ
- ストックオプション制度は、企業フェーズごとの目的に応じて柔軟に導入可能
- 設立直後は創業者・初期人材向け、資金調達後は従業員・外部人材向けに
- IPO期には適格SOの適用要件や上場審査との整合に留意
ストックオプション制度の導入をご検討中の企業様へ
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