非上場企業における有償ストックオプション(SO)設計において、注目されるのが『取得条項付新株予約権』です。
これは、一定の条件が満たされたときに会社が新株予約権を一方的に取得・消却できる仕組みで、柔軟なエグジット設計に活用されます。
本コラムでは、この制度の趣旨・法的根拠・登記事項・実務上の注意点をFAQ形式で解説します。
Q1:取得条項付新株予約権とは何ですか?
A:会社が一定の条件を満たしたときに、新株予約権を取得できる条項を付した新株予約権のことです。
会社法に規定されている「新株予約権の内容」の一つとして、以下のような条項が挙げられます。
「会社が当該新株予約権を取得することができる旨及びその取得の条件」
Q2:どのような場面で利用されますか?
A:主に以下のような目的で利用されます。
- 退職・契約終了時にSOを失効させる
- M&AやIPO前にSOを買い戻す(キャッシュアウト回避)
- 成果未達成の場合に報酬性を消滅させる
とりわけ、有償SOの場合は金銭を対価としているため、失効や取得処理を事前に設計しておかないとトラブルに発展します。
Q3:この取得条項は「登記事項」ですか?
A:はい、登記事項です。
取得条項付きの新株予約権を発行する場合、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)にその旨が記載されます。
記載例
「当会社は、一定の事由が生じたときは当該新株予約権を無償で取得することができる。」
そのため、発行前に定款変更や登記申請の準備が必要となる場合もあります。
Q4:どのように条項を定めればよいですか?
定め方の例(発行決議・契約書共通)
「会社は、当該新株予約権者が退職または譲渡制限に違反した場合には、当該新株予約権を無償で取得することができるものとする。」
※実務上は、「無償取得」か「有償取得」かを明示すること、条件を客観的に特定できるよう記載することが重要です。
Q5:注意すべき法的・実務的リスクはありますか?
あります。特に以下の点は要注意です。
- 取得の対価(無償/有償)によって税務インパクトが異なる
- 行使前に取得する場合、SO保有者とのトラブル防止のため契約で明示必須
- 「取得=失効」と誤解しない(形式上は会社が取得し、消却処理を行う)
まとめ
取得条項付新株予約権は、有償SO設計におけるリスク管理・柔軟運用の鍵となる制度です。
法的には会社法で明示され、登記事項にも該当するため、設計段階から弁護士・司法書士等の専門家と連携して慎重に進める必要があります。