ストックオプション(SO)は、企業の役員や従業員が一定の条件のもと自社株を取得できる権利ですが、そのメリットを十分に活かすためには、税金の仕組みを理解することが重要です。
ストックオプションの種類によって、課税タイミングや税率、確定申告の必要性が異なるため、適切な税務対策を講じなければ、想定以上の税負担が発生する可能性があります。
本記事では、ストックオプションに関する税金の基本、確定申告の流れ、計算方法、さらには節税対策について詳しく解説します。
ストックオプションの課税タイミングとは?
ストックオプションに係る税金は、主に以下の2つのタイミングで発生します。
① 権利行使時
ストックオプションを行使して株式を取得する際、取得価額(行使価格)と市場価格の差額が「利益」とみなされ、給与所得や一時所得として課税されることがあります。
② 株式譲渡時
取得した株式を売却した際、売却価格と取得価格(行使価格)の差額が「譲渡所得」として課税されます。
税制適格ストックオプションの場合は、権利行使時の課税が発生せず、株式譲渡時のみ課税されるため、節税メリットがあります。
ストックオプションの種類別に見る税金の違い
ストックオプションには、大きく分けて以下の3種類があり、それぞれ税金の扱いが異なります。
(A) 税制非適格ストックオプション(通常のストックオプション)
【税金のポイント】
- 権利行使時:株価と行使価格の差額に**給与所得税(最大55%)**が課税
- 株式譲渡時:売却価格と行使時の株価の差額に**譲渡所得税(約20%)**が課税
- 税負担が大きくなりやすい
【例】
- 行使価格:100円
- 行使時の株価:1,500円
- 売却時の株価:2,500円
→ 行使時に1,400円(= 1,500円 – 100円)が給与所得として課税される
→ 売却時に1,000円(= 2,500円 – 1,500円)が譲渡所得として課税される
(B) 税制適格ストックオプション(税制優遇あり)
【税金のポイント】
- 権利行使時:課税なし
- 株式譲渡時:売却価格と行使価格の差額に**譲渡所得税(約20%)**が課税
- 節税効果が大きい
【例】
- 行使価格:100円
- 売却時の株価:2,500円
→ 売却時に2,400円(= 2,500円 – 100円)が譲渡所得として課税される
税制適格ストックオプションは、一定の条件を満たせば大幅な節税が可能なため、活用する企業が多くなっています。
(C) 有償ストックオプション(購入型のSO)
【税金のポイント】
- 権利行使時:課税なし
- 株式譲渡時:売却価格と行使価格の差額に譲渡所得税(約20%)が課税
- 税制適格ストックオプションと同様の税制メリットを享受できる
有償ストックオプションは、付与対象者が費用を支払って取得するため、権利行使時に給与所得とみなされず、税制適格SOと同じような課税関係になります。
ストックオプションの確定申告は必要?
ストックオプションを行使したり、取得した株式を売却した場合、多くのケースで確定申告が必要になります。
(A) 確定申告が必要なケース
・ 税制非適格SOの権利行使をした場合(給与所得が発生)
・ 株式を売却して譲渡益が出た場合(年間20万円超の所得)
(B) 確定申告が不要なケース
・ 特定口座(源泉徴収あり)で株式を売却した場合
【確定申告の必要書類】
- 申告書B第一表・第二表
- 申告書第三表(分離課税用)
- 株式等に係る譲渡所得の計算明細書
ストックオプションの税金対策
① 税制適格ストックオプションを活用する
税制適格SOを利用すれば、権利行使時の課税を避け、売却時に譲渡所得税のみを支払うことで、税負担を大幅に軽減できます。
② 信託型ストックオプションの活用
信託型SOは、権利行使のタイミングを調整できるため、適切な時期に行使することで税負担を分散できます。
③ 株式売却のタイミングを分散する
一度に多額の利益を出すと、累進課税により税率が高くなるため、数年に分けて売却することで税金を抑えることができます。
④ 確定申告時に経費を活用する
株式の売却益に対して、投資にかかった費用(手数料など)を経費として計上することで、課税対象額を減らすことが可能です。
まとめ|ストックオプションの税金対策を万全に!
ストックオプションは大きな利益を得る可能性がある一方で、税負担をしっかり考慮しなければ手取り額が大きく減ってしまいます。
・ ストックオプションの税金は「権利行使時」と「株式譲渡時」の2回発生する
・ 税制適格ストックオプションを活用すると、権利行使時の課税を回避できる
・ 確定申告の要不要を確認し、適切な手続きを行うことが大切
・ 信託型SOの活用や売却時期の分散などで、税金を最小限に抑える
ストックオプションの導入・活用を検討している方は、税務・会計の専門家に相談し、最適な方法を選ぶことをおすすめします。
税金対策をしっかり行い、ストックオプションを最大限に活用しましょう!