新株予約権を発行した会社は、会社法の規定に基づき「新株予約権原簿」を作成・管理する必要があります。
新株予約権原簿は、発行した新株予約権の詳細や権利者の情報を記録する重要な帳簿であり、株式発行後の株主名簿と同じような役割を果たします。
しかし、「新株予約権原簿には具体的に何を記載すればいいのか?」「どのように管理すればよいのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、新株予約権原簿の記載事項や管理方法、会社法上のルールについて分かりやすく解説します。
新株予約権とは?
新株予約権の基本概念
新株予約権とは、特定の条件のもとで企業の株式を取得できる権利のことを指します。
権利行使時にあらかじめ決められた行使価額を払い込むことで、新たな株式を取得できます。
新株予約権の主な種類
新株予約権には、目的や発行先に応じていくつかの種類があります。
- ストックオプション(SO):従業員や役員向けの報酬制度
- 社外向け発行:投資家向けに発行し、資金調達を目的とするもの
- 無償割当:既存株主に対して無料で付与する新株予約権
- 有利発行:市場価格よりも有利な条件で発行されるもの
これらの新株予約権を管理するために必要なのが「新株予約権原簿」です。
新株予約権原簿とは?
新株予約権原簿とは、発行された新株予約権の内容や新株予約権者の情報を管理するための帳簿です。
会社法第249条に基づき、新株予約権を発行した株式会社は「新株予約権原簿」を作成し、遅滞なく管理する義務があります。
株主名簿と新株予約権原簿の違い
項目 | 内容 |
---|---|
株主名簿 | すでに株式を取得した株主の情報を管理 |
新株予約権原簿 | まだ株式を取得していないが、新株予約権を持つ権利者の情報を管理 |
新株予約権原簿の記載内容
会社法第249条に基づき、新株予約権原簿には以下の情報を記載しなければなりません。
① 無記名式の新株予約権証券が発行されている場合
記載事項
- 新株予約権証券の番号
- 新株予約権の内容および数
② 無記名式新株予約権付社債に付された新株予約権の場合
記載事項
- 新株予約権付社債券の番号
- 新株予約権の内容および数
③ 上記以外の場合(記名式新株予約権)
記載事項
- 新株予約権者の氏名・名称および住所
- 新株予約権の内容および数
- 新株予約権を取得した日
- 証券発行新株予約権の場合は証券番号
- 証券発行新株予約権付社債に付された場合は社債券の番号
新株予約権の譲渡と新株予約権原簿の関係
会社法では、新株予約権の譲渡に関するルールが定められています。
① 証券が発行されていない新株予約権の譲渡
- 新株予約権原簿に譲受人の情報を記載しなければ、会社や第三者に対抗できない(会社法第257条1項)
- つまり、新株予約権を譲り受けた者は、会社に対して名義書換を請求する必要がある
② 証券が発行されている新株予約権の譲渡
- 新株予約権証券を交付しなければ譲渡の効力が生じない(会社法第255条)
- 記名式の場合は、新株予約権原簿への名義書換が必要(会社法第257条2項)
新株予約権原簿の管理方法
会社法第252条1項では、新株予約権原簿の管理方法について以下の2通りが認められています。
① 企業の本店に保管する(原則)
② 管理人・管理会社の営業所に保管する(上場企業など)
上場企業では管理会社に委託するケースが一般的です。
新株予約権原簿の閲覧と書面交付請求
会社法では、新株予約権者は企業に対し、原簿の閲覧や書面交付を請求することができると定めています(会社法第252条2項)。
閲覧・交付請求の条件
- 株主または債権者であること
- 会社の業務妨害目的でないこと
企業は、正当な理由がない限り閲覧や交付請求を拒否できません。
まとめ
本記事では、新株予約権原簿の役割・記載事項・管理方法について解説しました。
- 新株予約権原簿は、新株予約権者や権利内容を管理する帳簿で、会社法第249条で作成が義務付けられている
- 株主名簿と異なり、新株予約権を持つ権利者の情報を記録するもの
- 新株予約権の譲渡には原簿の名義書換が必要
- 新株予約権者は、原簿の閲覧や書面交付を請求できる
会社が新株予約権を発行する際は、適切に新株予約権原簿を管理し、法律上の義務を遵守することが重要です。
今後、新株予約権の発行や管理を検討している企業は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
新株予約権の導入に関するご相談は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。