【無償ストックオプションとは?】税制適格の条件と注意点を解説

ストックオプション(SO)は、企業の成長とともに役員・従業員のインセンティブを高める手段として広く活用されています。その中でも 「無償ストックオプション」 は、発行時に金銭的負担が発生しないため、ベンチャー企業やスタートアップで特に人気の高い手法です。

しかし、無償で付与されるからこそ税務上の制約があり、税制適格要件を満たさない場合 「給与所得」として課税 されてしまうデメリットもあります。

本記事では、無償ストックオプションの基本的な仕組みから、税制適格の要件、メリット・デメリットまでを徹底解説していきます。

目次

無償ストックオプションとは

無償ストックオプションとは、役員・従業員が発行時に金銭を支払うことなく付与されるストックオプション のことです。

通常、ストックオプションには「有償」と「無償」の2種類があります。

  • 無償ストックオプション → 付与時の負担なし
  • 有償ストックオプション → 付与時に発行価額を払い込む

特にベンチャー企業では、資金が限られているため、従業員への報酬として現金の代わりに「株式(SO)」を提供するケースが増えています。

しかし、無償ストックオプションは税務上「給与所得」とみなされ、最大55%の課税 が発生する可能性があるため注意が必要です。これを回避するためには、税制適格ストックオプションの要件を満たすこと が重要になります。

税制適格ストックオプションとは?

ストックオプションには 「税制適格」「税制非適格」 の2種類があります。

区分税制適格ストックオプション税制非適格ストックオプション
課税タイミング売却時のみ(譲渡所得課税 約20%)行使時(給与課税 最大55%)+売却時(譲渡所得課税 約20%)
税制メリット行使時の税金がかからず、売却時に約20%の譲渡課税のみ行使時に給与所得として課税されるため、税負担が大きい
適用条件あり(以下の5つの要件を満たす必要あり)なし

税制適格ストックオプションの場合、行使時には税金がかからず、売却時に約20%の譲渡所得課税 だけで済むため、大きな節税効果があります。

税制適格ストックオプションの要件

税制適格ストックオプションを適用するためには、以下の 5つの要件 を満たす必要があります。

  1. 発行形態
    • 無償で発行されること
    • 譲渡不可(他人に売ったり譲ったりできない)
  2. 行使価額の制限
    • 付与時の株価 行使価額(時価未満では不可)
    • 1年間の行使額上限:最大3,600万円(企業の設立年数・規模による)
  3. 行使期間の制限
    • 付与決議の 2年後〜10年後(最大8年間) のみ行使可能
    • 設立5年未満の未上場企業は 最大15年間 行使可能
  4. 付与対象者の制限
    • 発行会社またはその子会社の取締役・執行役・使用人のみ
    • 社外の専門人材(高度人材)も一部適用可(要件あり)
  5. 保管委託
    • 証券会社等にストックオプションを保管委託する必要あり

これらの条件を満たしていない場合、ストックオプションの権利行使時に給与課税(最大55%)が発生してしまいます。


無償ストックオプションのデメリッ

① 税制適格でなければ高額課税が発生

税制適格の要件を満たしていない場合、行使時に 最大55%の給与課税 が発生し、想定以上の税負担が生じる可能性があります。

② 無償だと従業員の意識が低くなる

ストックオプションを無償で付与すると、従業員の「もらった実感」が薄く、インセンティブ効果が低い という課題があります。

③ 株主総会の決議が必要

役員に付与する場合、株主総会での決議が必須 となります。有償ストックオプションであれば、取締役会決議のみで発行できるため、手続きの柔軟性が異なります。

有償ストックオプションでデメリットを解決

有償ストックオプションであれば、以下のように無償ストックオプションのデメリットを解消できます。

  • 行使時の税負担なし → 売却時のみ課税(20%)
  • 従業員の意識向上 → お金を払って取得するため、モチベーションUP
  • 発行の柔軟性向上 → 取締役会決議のみで発行可(機動性UP)

「無償」「有償」どちらが自社に適しているかを慎重に検討することが重要です。

とめ

無償ストックオプションは 初期コストを抑えつつ、役員・従業員へインセンティブを与える有効な手段 です。しかし、税制適格の要件を満たさないと、高額課税が発生するリスク もあるため、発行時の設計が非常に重要です。

  • 無償ストックオプションは発行時の金銭負担なし
  • 税制適格要件を満たすことで、大幅な節税が可能
  • 有償ストックオプションと比較して、最適な選択を

ストックオプションの導入・設計に関するご相談は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次