ストックオプション(新株予約権)の導入は、上場企業に限らず非上場会社でも活用可能です。特に優秀な人材の確保・資金を抑えたインセンティブ設計を検討する際、非上場企業にとっても有効な手段となり得ます。
本稿では、非上場会社がストックオプションを発行する場合の具体的な手続きや設計上の留意点をFAQ形式でわかりやすく解説します。
Q1:非上場会社でもストックオプションを発行できますか?
はい、可能です。
会社法上、上場・非上場の別なく、株式会社であれば新株予約権としてのストックオプションの発行は認められています(会社法236条以下)。
ただし、非上場会社の場合は、次のような点で注意が必要です。
- 株価の公正評価が困難(市場価格が存在しない)
- 売却・換金性が低い(行使後の株式譲渡制限あり)
- 会計・税務処理の設計を誤るとリスクが大きい
Q2:非上場会社がストックオプションを発行する場合の手続は?
以下が一般的な発行手続きの流れです。
手順 | 内容 |
---|---|
① 発行要項決定 | 発行する新株予約権の内容を決定する |
② 株主総会決議 | 株主総会で新株予約権の発行を決議(会社法238条) |
③ 割当契約書の締結 | 対象者と新株予約権割当契約を締結 |
④ 払込(有償の場合) | 有償SOの場合、対象者からの払込を確認 |
⑤ 登記申請 | 募集新株予約権の発行登記を法務局に申請(設置会社のみ) |
※取締役会設置会社であれば、割当ては、取締役会決議で行う必要があります。
Q3:発行時の株価はどう決めますか?
非上場会社の場合、市場価格が存在しないため、第三者評価(公認会計士等)による株価算定が必要です。
特に以下の目的では、評価の妥当性が極めて重要です。
- 税務上の「みなし報酬」課税を避ける
- 会社法上の払込金額の合理性を担保する
- 既存株主との利害調整に資する
評価方法は、DCF法、マルチプル法、類似会社比較法などが用いられます。
Q4:税制適格SOを非上場会社が発行することはできますか?
一定の要件を満たせば、非上場会社でも税制適格ストックオプションを発行可能です。
主な要件は以下のとおりです。
区分 | 内容 |
---|---|
付与対象 | 取締役・従業員(社外役員や顧問は除外) |
行使価格 | 付与時点の公正株価以上 |
行使期間 | 付与から2年超10年以内 |
上限金額 | 年間3,600万円までが課税繰延の対象(行使価格ベース) |
保管委託 | 証券会社等により株式を保管(要件緩和あり) |
要件のひとつでも欠けると、非適格SOとなり課税タイミングが変わるため、設計時には慎重な確認が必要です。
Q5:非上場企業でSOを設計する際の検討ポイントは?
論点 | 実務上の注意点 |
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対象者の選定 | 社員、役員、顧問など役務提供の有無に応じて設計を変更 |
権利消滅条項 | 退職・解雇・死亡・IPOなどの事由に応じて消滅・譲渡制限条項を盛り込む |
種類株式の活用 | 希薄化対策や議決権調整のためにSO用の種類株式を設計するケースもあり |
税務リスクの検討 | 有償SO/無償SOの選択に応じて税務否認リスクや報酬性の有無を検討 |
まとめ
非上場会社におけるストックオプションの導入は、優秀な人材の確保・資金負担の軽減において極めて有効な手段です。ただし、評価・契約・税務・登記の各ステップにおいて慎重な設計が求められます。
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