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ストックオプションによる希薄化と計算方法・許容水準・実務上の管理ポイント

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新株予約権(SO)

ストックオプション(新株予約権)は、スタートアップや成長企業にとって不可欠なインセンティブ制度です。
一方で、設計を誤ると「株式の希薄化」が進み、既存株主との利害調整やIPO審査に影響を及ぼす可能性があります。

本稿では、ストックオプションによる希薄化の仕組み、計算方法、実務上の管理ポイントを整理します。

希薄化とは何を意味するのか

ストックオプションによる希薄化とは、
新株予約権が行使されることにより発行済株式総数が増加し、既存株主の持株比率が相対的に低下する現象をいいます。

既存株主の保有株式数自体は変わりません。
しかし「分母(総株式数)」が増加することで、以下が生じます。

  • 議決権割合の低下
  • 1株当たり利益(EPS)の低下
  • 1株当たり純資産(BPS)の希薄化

希薄化は、企業価値が増加していない前提では、既存株主にとって不利益となります。

希薄化の基本的な流れ

ストックオプションによる希薄化は、次のプロセスで生じます。

  1. 新株予約権の付与
  2. 権利行使
  3. 新株発行または自己株式交付
  4. 発行済株式総数の増加

特に重要なのは、「潜在株式(将来株式に転換され得る権利)」の存在です。
実務では、完全希薄化ベース(Fully Diluted)での資本構成管理が求められます。

希薄化率の計算方法

希薄化率は、以下の式で算出します。

希薄化率(%)
= 新規発行予定株式数 ÷ (発行済株式総数+新規発行予定株式数) × 100

  • 現在の発行済株式総数:10,000株
  • ストックオプション行使による新株発行予定数:1,000株

希薄化率 = 1,000 ÷ 11,000 × 100 = 約9.09%

この場合、既存株主の持株比率は約9%低下します。

株主に与える主な影響

1. 議決権比率の低下

経営支配に影響するラインとして、

  • 過半数
  • 3分の2以上(特別決議要件)
  • 3分の1超(拒否権ライン)

といった基準があります。

希薄化により、創業者や主要株主がこれらの基準を下回ると、支配構造に変化が生じる可能性があります。

2. 経済的価値の希薄化

株式数が増加すると、利益や純資産をより多くの株数で分けることになります。

その結果、

  • EPSの低下
  • 理論株価の調整
  • 投資家リターンの減少懸念

が生じます。

適正な発行比率の目安はあるのか

一般的な実務感覚では、

  • シード~シリーズA:10%前後
  • 成長段階:累計で15%程度

が一つの目安とされることが多いですが、画一的な基準は存在しません

重要なのは、

  • 将来の資金調達による希薄化
  • IPO時点での累計希薄化率
  • 投資契約上の条項(アンチディリューションなど)

を踏まえた設計です。

ストックオプションのみで20%を超える設計は、合理的説明が求められるケースが多くなります。

実務で見落とされやすい論点

1. 潜在株式の管理不足

・未行使の新株予約権
・転換社債型新株予約権付社債(CB)
・将来発行予定枠

これらを含めて管理しなければ、実態以上に希薄化が進んでいることがあります。

2. ラウンド間の整合性不足

シリーズAで多くのSO枠を確保すると、
シリーズBでの投資家持分調整が困難になることがあります。

資本政策表(キャップテーブル)は、常にFully Dilutedベースで管理すべきです。

3. 既存株主への説明不足

希薄化は避けられない場合もあります。
問題は、説明可能かどうかです。

  • どの人材に
  • どの成果を期待し
  • 企業価値をどれだけ向上させる設計なのか

を数値で示すことが求められます。

希薄化をコントロールするための設計ポイント

  1. ベスティング条項の設定
  2. 段階的な付与(フェーズ設計)
  3. 上限枠の明確化
  4. Fully Dilutedベースでの管理
  5. IPO時点の想定持株比率の逆算

ストックオプションは「発行した瞬間」に希薄化が確定するわけではありません。
設計段階でどこまで見通せているかが実務の分岐点になります。

まとめ

ストックオプションによる希薄化は、

  • 議決権への影響
  • 経済的価値への影響
  • 将来の資金調達への影響

という三方向から検討する必要があります。

単に「10%以内なら安全」という問題ではなく、
資本政策全体との整合性が最重要です。

ストックオプションは成長のための制度です。
しかし、資本構成の設計を誤れば、将来の選択肢を狭める要因にもなります。

希薄化を数値で把握し、説明可能な設計を行うことが、
健全な成長戦略の前提となります。

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