ストックオプション(SO)を設計する際、制度の核心となるのが行使条件と失効条件です。
実務では、「退職したらどうなるのか」「一定の業績未達の場合は行使できるのか」といった点が必ず問題になります。
もっとも、これらの条件は自由に決められるわけではありません。
ストックオプションは会社法上の新株予約権であり、その内容設計には一定の法的枠組みがあります。
本コラムでは、行使条件・失効条件について、会社法上どこまで設計できるのかを整理します。
1.行使条件は「新株予約権の内容」である
新株予約権については、会社法236条により、
その内容として行使条件を定めることが認められています。
したがって、ストックオプションにおいても、
- 一定期間の継続勤務
- 役職在任要件
- 一定の事由が生じた場合の行使制限
といった条件を付すこと自体は、制度上想定されています。
問題は、その条件の置き方です。
2.よく設けられる行使条件の整理
(1)在職要件
最も典型的なのが、「行使時点で在職していること」という条件です。
これは、
- インセンティブ目的との整合性
- 労務提供との対価関係
という観点から、実務上広く用いられています。
もっとも、どの時点まで在職を求めるのか(付与時か、行使時か)によって、実質的な効果は大きく異なります。
(2)ベスティング(段階的確定)
一定期間の経過により、段階的に行使可能となる設計も一般的です。
この場合、
- 行使可能となる時期
- 失効する未確定部分
を、募集事項または契約内容として明確にしておく必要があります。
3.失効条件を設ける際の注意点
(1)退職時失効条項
退職を理由に新株予約権を失効させる設計は、多くの企業で採用されています。
ただし、
- 自己都合退職
- 会社都合退職
- 任期満了
を一律に扱うか、区別するかは、制度趣旨との関係で慎重な検討が必要です。
形式的には有効でも、インセンティブとしての合理性を欠く設計は、後の紛争要因になり得ます。
(2)失効のタイミング
失効条件は、
- 当然失効とするのか
- 会社の意思表示を要するのか
によって、実務対応が変わります。
特に、「退職したが、失効処理が未了のまま行使期間を迎えた」といったケースでは、原簿管理や通知方法が問題となります。
4.税制適格ストックオプションとの関係
税制適格ストックオプションの場合、行使条件・失効条件についても、税制要件との整合性が求められます。
例えば、
- 行使期間の下限・上限
- 譲渡禁止
- 対象者要件
などは、制度設計全体と不可分です。
行使条件を過度に複雑化させると、
結果として税制適格要件を満たさなくなるリスクもあるため注意が必要です。
5.実務で問題になりやすいケース
実務上、次のような相談は少なくありません。
- 契約書には失効と書いてあるが、株主総会決議に反映されていない
- 退職後の行使可否について社内認識が一致していない
- 原簿上は存続しているが、失効処理がされていない
- IPO直前に潜在株式として扱われるか争点になった
これらはすべて、行使条件・失効条件の整理不足に起因する問題です。
6.まとめ
ストックオプションの行使条件・失効条件は、
「契約で決めればよい」という話ではなく、
会社法上の新株予約権の内容としてどう整理されているかが重要です。
- 株主総会決議との整合性
- 募集事項としての明確性
- 原簿管理との連動
これらを踏まえた設計がなされていない場合、
制度は形だけ存在し、実際には機能しないものとなります。
行使条件・失効条件は、ストックオプションの「細部」ではなく、
制度の実効性そのものを左右する中核部分であることを、改めて確認しておく必要があります。
※本コラムは一般的な制度整理を目的としたものであり、具体的な条件設計については、必ず専門家へ個別相談のうえ判断してください。
ご依頼・ご相談
ストックオプションの設計及び評価に関するご依頼・ご相談は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。
