ストックオプション(新株予約権)の会計処理については、
制度自体は広く知られている一方で、会計基準上の整理が正確に理解されていないケースも少なくありません。
本コラムでは、会計基準・実務指針に基づき、
実務上誤解されやすいポイントを事実ベースで整理します。
論点1:有償ストックオプションなら費用は発生しないのか
結論として、必ずしもそうではありません。
有償ストックオプションであっても、
- 付与した新株予約権の公正な評価額
- 従業員等からの払込金額
を比較し、評価額が払込金額を上回る場合には、
その差額が労働サービスの対価として株式報酬費用に該当します。
これは、
実務対応報告第36号に基づく整理です。
論点2:払込金額はすべて損益に影響しないのか
払込金額そのものは、
純資産の部に新株予約権として計上されます。
したがって、
- 払込時点では損益に影響しない
という点は事実です。
ただし、
公正な評価額との差額部分は別途検討対象となり、
損益計算書に影響する可能性があります。
論点3:無償ストックオプションは必ず費用になるのか
原則としては、
付与日における公正な評価額を、対象勤務期間に配分して費用計上します。
これは、企業会計基準第8号および適用指針第11号に基づく取扱いです。
ただし、未上場企業については、
会計基準第13項により、簡便的な取扱いが認められています。
論点4:未上場企業の簡便法とは何を簡略化しているのか
簡便法において簡略化されているのは、
**「評価の対象」**です。
- 原則:公正な評価額(本源的価値+時間価値)
- 簡便法:本源的価値のみ
ここでいう本源的価値とは、
- 自社株式の評価額
- から、行使価格を控除した差額
を指します。
行使価格が自社株式評価額以上の場合、
本源的価値はゼロとなり、結果として費用計上は行われません。
論点5:評価額は毎期見直す必要があるのか
ストックオプションの公正な評価単価は、
原則として付与日に算定し、その後は見直しません。
失効見込みについては、
- 評価単価ではなく
- 付与数の見積り
に反映させる形で調整します。
この整理も、
ストックオプション会計基準および実務対応報告に基づくものです。
論点6:失効した場合の会計処理はどうなるのか
有償ストックオプションが権利不確定で失効した場合、
- 新株予約権として計上していた払込金額のうち
- 当該失効に対応する部分
を、利益として計上します。
一方、
すでに費用計上済みの株式報酬費用については、
基準に従い調整が行われます。
まとめ
- 有償SOであっても、条件次第で費用は発生する
- 払込金額と労働対価部分は会計上区別される
- 無償SOは原則費用処理、未上場企業には簡便法がある
- 評価単価は付与日で確定し、原則見直さない
- 会計処理はすでに基準で定められている
ストックオプションの会計処理は、
解釈で動かす領域ではなく、基準に従って整理する領域です。
まずは、何が「決まっているルール」なのかを正確に把握することが、実務対応の前提となります。
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