― 会計基準・実務指針から整理する有償SO/無償SO ―
ストックオプション(新株予約権)の会計処理については、
企業の裁量で決められる部分は多くありません。
有償か無償か、未上場か上場かによって、
適用される会計基準・実務指針が明確に分かれています。
本コラムでは、評価論や設計論を排し、
現行の会計ルールとして何が定められているかのみを整理します。
1. 有償ストックオプションの会計処理(事実整理)
根拠となる実務指針
- 実務対応報告第36号
「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」
(1) 払込金額の取扱い
有償ストックオプションの付与に際し、
従業員等から払い込まれた金額は、純資産の部に新株予約権として計上します。
(仕訳例)
(借方)現金預金 /(貸方)新株予約権
(2) 株式報酬費用の認識
有償ストックオプションであっても、
付与された新株予約権の公正な評価額が払込金額を上回る場合、
その差額は労働サービスの対価として整理されます。
この差額は、対象勤務期間にわたり、
株式報酬費用として費用配分されます。
(3) 費用配分の基礎
各会計期間の費用計上額は、
- 有償ストックオプションの公正な評価額
- から、従業員等の払込金額を控除した金額
を、合理的な方法により期間配分して算定します。
(4) 公正な評価単価
- 公正な評価単価は付与日に算定
- 原則として見直しは行わない
- 失効見込みは数量で調整し、評価単価には反映しない
とされています。
(5) 失効時の処理
権利不確定で失効した有償ストックオプションについては、
新株予約権として計上していた払込金額のうち、
当該失効に対応する部分を利益として計上します。
2. 無償ストックオプションの会計処理(事実整理)
根拠となる会計基準
- 企業会計基準第8号
「ストック・オプション等に関する会計基準」 - 企業会計基準適用指針第11号
(1) 原則的な処理
無償ストックオプションについては、
付与日における公正な評価額を、
対象勤務期間に配分して費用計上することが原則です。
(仕訳例)
(借方)株式報酬費用 /(貸方)新株予約権
(2) 未上場企業における簡便的取扱い
未上場企業については、
会計基準第13項により、簡便的な取扱いが認められています。
この場合、
- 公正な評価額
ではなく - 単位当たりの本源的価値
に基づいて会計処理を行うことができます。
(3) 本源的価値の定義
本源的価値とは、
- 算定時点の自社株式の評価額
- から、行使価格を控除した差額
をいいます。
行使価格が自社株式評価額以上である場合、
本源的価値はゼロとなり、費用計上は行われません。
3. 会計処理に関して決まっていること・決まっていないこと
| 項目 | 会計基準上の扱い |
|---|---|
| 有償SOの払込金額 | 新株予約権として計上 |
| 評価額と払込額の差額 | 株式報酬費用 |
| 無償SOの原則処理 | 公正な評価額を費用配分 |
| 未上場企業の簡便法 | 本源的価値で処理可能 |
| 評価方法の選択 | 会計基準に従う必要あり |
まとめ
- 有償・無償にかかわらず、会計処理は基準・指針で整理されている
- 有償SOでも、条件次第で株式報酬費用は発生する
- 無償SOは原則費用処理、未上場企業には簡便法あり
- 「費用が出るかどうか」は会計基準の結果であり、任意ではない
ストックオプションの会計処理は、
制度設計以前に、すでにルールが定められている分野です。
まずは、基準上の整理を正確に把握することが前提となります。
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