ストックオプション(新株予約権)を導入する際、実務担当者が最初に悩むのが「何個付与すればよいのか」という点です。
しかし実務では、個数から考えるのではなく、発行済株式総数に対する比率(持分割合)から設計する方法が一般的です。
株数は株式分割などで変動する可能性がありますが、持分比率は会社の資本構造に直接関係するためです。本稿では、ストックオプションの個数設計を「比率」「配分」「税制制約」という観点から整理します。
1.まず「全体枠(プール)」を決める
ストックオプションの設計では、最初に会社全体としてどの程度の持分をインセンティブに使うのかを決めます。
一般的な手順は次のとおりです。
- 発行済株式総数を確認
- その一定割合をストックオプション枠として確保
- その枠内で対象者へ配分
この枠を「ストックオプションプール」と呼ぶことがあります。
このようにトップダウン方式で設計することで、既存株主の持分希薄化を管理することができます。
2.株数よりも「比率」が重要な理由
ストックオプション設計で比率が重視される理由は主に2つあります。
(1)株式分割への対応
株数は株式分割や株式併合により変化します。
しかし持分比率は原則として変わりません。
そのため、株数ではなく「何%の持分を付与するか」という考え方が実務上採用されています。
(2)希薄化管理
ストックオプションが行使されると、新株が発行されることで既存株主の持分は希薄化します。
したがって、投資家や創業者にとって重要なのは
自分の持分が何%薄まるのか
という点です。
そのため、ストックオプションは通常、株数ではなく発行済株式総数に対する割合で管理されます。
3.IPOを前提とした場合の発行枠
スタートアップ企業では、IPOを見据えた資本政策の中でストックオプションを設計することが一般的です。
その場合、実務では
発行済株式総数の一定割合をストックオプション枠として確保する
という考え方が採用されます。
この枠の範囲内で、
- 経営陣
- コアメンバー
- 従業員
に配分していきます。
4.フェーズによって配分は変わる
ストックオプションの配分は会社の成長段階によって変わります。
創業期
創業初期は、
- 給与水準が低い
- 事業リスクが高い
という状況であるため、リスクを負って参加するメンバーに対して比較的大きな持分を付与するケースがあります。
成長期
組織が拡大すると、ストックオプションは
- 採用インセンティブ
- 従業員のモチベーション維持
といった目的で広く配分される傾向があります。
この段階では、個人ごとの付与割合は創業期より小さくなることが一般的です。
5.付与個数を決める際の計算構造
最終的な付与個数は、次の要素を踏まえて決定されます。
- ストックオプションプール(全体枠)
- 対象者の役割・貢献度
- 権利行使価格
- 想定される企業価値
従業員にとっての経済的価値は、次の式で計算されます。
(売却時株価 − 行使価額) × 株数
したがって企業側は、想定される将来株価から逆算して、インセンティブとして意味のある個数を設計します。
6.税制適格ストックオプションの制約
税制適格ストックオプションを利用する場合、個数設計には税制上の制約も関係します。
租税特別措置法では、次のような条件が定められています。
- 権利行使価額は付与時の株価以上
- 年間の権利行使価額に上限あり
そのため、付与個数が多すぎる場合、
行使に必要な資金が高額になる
という問題が生じることがあります。
この点も個数設計において重要な要素です。
7.個数設計で注意すべきポイント
ストックオプションの付与数を決める際には、次の点を確認する必要があります。
- 既存株主の希薄化
- 投資契約の発行制限条項
- 税制適格要件
- 行使資金の負担
複数のストックオプション制度を併用している場合は、潜在株式数の合計を把握しておくことも重要です。
まとめ
ストックオプションの個数は、単純に株数を決めるのではなく
- 発行済株式総数に対する比率
- 資本政策との整合性
- 税制制約
を踏まえて設計する必要があります。
まず会社全体のストックオプション枠を設定し、その枠内で対象者ごとの配分を決めるという方法が一般的です。
ストックオプションは人材インセンティブと資本政策の両面に関係する制度であるため、制度設計の段階で慎重な検討が求められます。
