ストックオプション(新株予約権)の会計処理において、
「条件変更」は数少ない重要論点の一つです。
原則として、ストックオプションの公正な評価単価は
付与日で確定し、その後は見直しません。
しかし、会計基準では、一定の条件変更があった場合に限り、例外的な取扱いが定められています。
本コラムでは、どのような変更が「条件変更」に該当し、会計処理に影響するのかを整理します。
1. 会計基準が想定している「条件変更」とは何か
会計基準における条件変更とは、
- 付与時に前提とされていた
- ストックオプションの経済的内容
が、事後的に変更されることを指します。
単なる状況変化ではなく、
契約条件や権利内容そのものが変更されるかどうかが判断基準になります。
2. 条件変更に該当する代表的なケース
会計基準上、条件変更として整理されるのは、例えば次のような場合です。
- 行使価格の変更
- 権利行使期間の変更
- 権利確定条件(勤務条件等)の変更
- 付与対象者や付与数に関する契約条件の変更
これらはいずれも、
付与時点で算定した評価単価の前提条件を直接変更するものです。
3. 条件変更に該当しないケース
一方、次のような事象は、条件変更には該当しません。
- 株価の変動
- 業績の変化
- 実際の退職者数が見込みと異なったこと
- 失効見込みの変動
これらは、
- 評価単価
ではなく - 数量見積り
で対応する事項であり、
評価の見直し理由にはなりません。
4. 条件変更があった場合の会計処理の基本整理
条件変更があった場合、会計基準では次の整理が採られます。
- 条件変更日を基準として
- 変更後の条件に基づき
- 新たな公正な評価単価を算定
そのうえで、
- 変更前にすでに計上した株式報酬費用
- 変更後の条件に基づき算定される費用総額
との差額を、残存する対象勤務期間にわたって処理します。
5. 条件変更による「費用の減額」はどう扱われるか
条件変更の結果、ストックオプションの価値が下がる場合であっても、
すでに計上した費用を単純に取り消すことはできません。
会計基準では、変更前に確定的に提供された労働サービスに対応する費用は、遡って修正しない整理が採られています。
このため、条件変更後の処理は、残存期間に対する影響として整理されます。
6. 実務で注意すべき整理ポイント
条件変更に関して、実務上特に注意すべき点は次のとおりです。
- 「条件変更」と「見積り変更」を混同しない
- 行為の実質が権利内容の変更かどうかを確認する
- 条件変更日を明確に特定する
- 変更前後の評価前提を整理して説明可能にする
条件変更は、評価単価を見直せる例外であるがゆえに、厳格な判断が求められる領域です。
まとめ
- 評価単価は原則として付与日で固定される
- 条件変更があった場合のみ、例外的に評価を見直す
- 条件変更とは、契約条件・権利内容そのものの変更を指す
- 株価変動や失効見込みの変動は条件変更ではない
- 変更後の影響は残存期間にわたって整理される
ストックオプション会計における条件変更は、「評価を見直せる数少ない場面」です。
その分、変更の実質と会計上の整理を切り分けて考えることが、実務対応の前提となります。
※本コラムは、企業会計基準および企業会計基準適用指針に基づく一般的整理を目的としています。
個別具体的な会計処理については、必ず監査法人・会計専門家への確認が必要です。
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