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ストックオプションの発行手続を網羅解説

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新株予約権(SO)

非取締役会設置会社でのストックオプション発行 ― 手続の基本枠組み

設立間もない非公開会社から、取締役会を設置していない状態でストックオプションを発行したいとの相談がありました。

通常、ストックオプションは上場会社や取締役会設置会社での事例が多く、非取締役会設置会社での発行は実務上あまり見かけません。
しかし、募集株式の発行手続と基本は同じであり、相違点は 「決議機関が株主総会になる」 という点にあります。

クライアント側は「何を決めればよいのか」「どの順序で進めるのか」が不明確だったため、決定事項(募集事項)と決定手順の整理から始めました。
さらに、税制適格ストックオプションとするか否かによって内容が大きく変わるため、この点も重要な検討要素となります。

税制適格ストックオプションの要件整理(令和6年度改正後)

税務面を重視する会社は多く、まず検討すべきは「税制適格要件」を満たすかどうかです。
適格となることで、権利行使時の給与課税を回避し、株式売却時に譲渡所得課税(20.315%)のみで済むという大きなメリットがあります。

主な要件(租税特別措置法第29条の2・令和6年度改正後)

  • 無償発行であること
  • 対象者は会社の取締役・従業員等(大株主やその親族は除外。ただし「社外高度人材」については範囲拡大の改正あり)
  • 権利行使期間は付与後2年以上10年以内
    (※設立5年未満の非上場会社は最長15年まで可)
  • 行使価額の年間合計が最大3,600万円まで
    (改正前の1,200万円から大幅引上げ)
  • 行使価額は付与契約時点の株価以上
    (2023年7月国税庁Q&Aにより、特例方式=セーフハーバーの利用可)
  • 譲渡禁止条項を設けること
  • 取得株式の管理方法について、従来の証券会社保管に加え、発行会社自身による管理も可能(改正により緩和)

実務上のポイント

一方で、会計処理やIPO審査の観点からは、低額評価やセーフハーバー利用による費用計上の影響にも注意が必要です。

募集事項で必須なのは「無償発行」と「行使価額」です。

それ以外の要件(対象者の範囲、譲渡制限、管理方法など)は、割当契約やSO付与契約で補うことが一般的です。

改正により、年間上限額の拡大・株式管理方法の選択肢拡大・社外高度人材への付与緩和が実現したため、スタートアップにとってより柔軟に制度設計できる環境になりました。

手続の原則的な流れ(取締役会設置会社)

一般的な取締役会設置会社では、以下の手順で進みます。

  1. 取締役会で株主総会招集を決定
  2. 株主総会で募集事項を決定(または取締役会に委任)
  3. 取締役会で具体的募集事項を決議
  4. 割当対象者へ通知
  5. 割当対象者から申込み
  6. 取締役会で割当決議(+契約承認)
  7. 割当契約締結
  8. 割当通知 → 割当日(発行日)

株式発行と似ていますが、払込期日がない点が異なります。
また、総数引受契約を用いる場合は、手続を大幅に省略することも可能です。

非取締役会設置会社での違い

非取締役会設置会社の場合、割当決議も株主総会で行う必要があります。

原則的には次の流れです。

  1. 取締役の過半数一致で株主総会招集を決定
  2. 株主総会で募集事項を決定
  3. 割当対象者へ通知 → 申込み
  4. 取締役の過半数一致で再度株主総会招集を決定
  5. 株主総会で割当決議(+契約承認)
  6. 契約締結・割当通知 → 割当日

株主総会を2回開催することになるため、効率性に課題があります。

実務での簡略化と留意点

最終的に、当該会社では次のように整理しました。

  1. 取締役の過半数一致で株主総会招集を決定
  2. 株主総会で「募集事項の決定」+「申込みを条件とした割当決議」+「契約承認」
  3. 契約締結(通知・申込み・承諾を兼ねる)
  4. 割当通知 → 割当日(発行日)

この方法により、株主総会は1回で済み、手続はシンプルになります。

まとめ

  • 非取締役会設置会社では、株主総会が中心。
  • 総数引受契約は秘密保持の観点で使いにくい場合が多い。
  • 実務上は「株主総会1回+契約活用」で負担軽減が可能。