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ストックオプションの目的株式数を算定式+調整条項で設計する場合の登記記載と注意点

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新株予約権(SO)

ストックオプション(新株予約権)の発行時、「新株予約権1個につき普通株式100株」など、
目的株式数を固定数で定めることが一般的です。

しかし、将来的な株式分割・株式併合・有償割当などを見据えて、
算定式+調整条項をあらかじめ組み込んでおく設計が、近年では急増しています。

本コラムでは、目的株式数の“変動可能性”を織り込んだ設計を行う場合の登記事項の書き方・補正対策・実務フローを解説します。

1.制度上算定式で定めることは可能か?

可能です。
登記事項の一部として「新株予約権の目的である株式の種類および数又はその算定方法」と定めています。
したがって、

  • 固定数(例:1個につき普通株式100株)でも
  • 算定式(例:発行済株式数÷X% など)でも
  • 調整式つき変動型(例:分割・併合時は係数調整)でも

いずれも登記できます。
ポイントは「合理的で、客観的に明らかな式であること」です。

2.よくある実務的な設計例(株式分割などへの調整前提)

「新株予約権1個につき普通株式100株とする。
ただし、当社が株式分割・併合・株式無償割当等を行った場合には、
発行済株式総数に対する予約権の希釈割合を維持するよう、付与済の新株予約権について目的株式数および行使価額を以下の計算式により調整する。」

【登記記載例】

「普通株式10,000株
新株予約権1個につき当社普通株式100株とする。
ただし、当社が株式分割、併合、株式の無償割当を行った場合には、発行済株式総数に対する持分割合を維持することを目的として、
所定の調整式により目的株式数を変更できる。」

3.登記で注意すべき“調整条項付き算定式”の記載方法

観点実務対応
調整式の明示性抽象的な「場合により調整する」では補正対象に。具体的な要件+調整方法の概要を明記する
登記官との事前相談特に「事例に乏しい調整式」の場合は、登記申請前に事前照会しておくと補正リスクを大幅に減らせる

4.補正が多いパターン(経験的注意)

よくあるNG補正理由
「株式分割その他会社が必要と認めた場合には調整する」「調整事由が不明確/任意性が高く、登記事項として不適」とされる
「調整方法は別途定める」登記簿に記載すべき“算定方法”が空白とされる
そもそも算定式が複雑すぎて読めない登記官が「明確で合理的かつ具体的」であると判断できないと、却下または補正対象に

5.調整式を設計する際の実務フロー(社内的にも有用)

  1. 想定される株式構成変更事由(分割・併合・新株発行など)を洗い出す
  2. 希薄化率や持分維持率を「どう調整するか」設計(条文案の作成)
  3. 契約書/登記事項/議事録の3点セットを整合
  4. 登記申請前に、必要に応じて法務局に文案照会
  5. 登記完了後はキャップテーブル・社内管理台帳にも反映

目的株式数を“調整条項付き算定式”で設計するなら、「登記簿に説明できる明確性」が不可欠

新株予約権の柔軟な制度設計は、インセンティブ制度の本質です。
しかしその反面、登記簿という“公示文書”に表現される内容が不明確では制度そのものが無効視されかねません。

  • 抽象的すぎず
  • 条文として自立可能な水準で
  • 登記官が審査できる程度に明確に

これを実現することが、スタートアップ・未上場企業におけるストックオプション制度の信頼性向上につながります。