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ストックオプションを付与したときの会計処理と開示の考え方

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新株予約権(SO)

ストックオプション(以下、SO)は、税務上の取扱いと同様に、会計処理の考え方も独特です。
特に、上場準備中の会社や、監査法人のレビューを受ける企業では、費用計上のタイミング注記の方法でミスが起きやすい項目です。

ストックオプション会計の基本的な考え方

SOは「役務の対価として交付される新株予約権」です。
したがって、会計上は「給与費用」として認識することが原則です。

ただし、他の報酬と異なり、SOは付与時点では現金支払いが発生せず、価値も時価によって変動します。
そのため、会計上は「付与時の公正価値」を基準に費用を見積り、権利確定期間にわたって費用を配分する方法が採られます。

ストックオプションの分類と処理区分

種類対象会計処理の考え方税務上の扱い
税制適格SO(無償)役員・従業員費用計上あり(報酬費用)法人税上は損金不算入
税制非適格SO役員・従業員・社外関係者費用計上あり(報酬費用)行使時に損金算入可(行使時課税)
有償SO投資家・外部関係者等払込金を「新株予約権」科目で処理原則、費用処理なし

仕訳の流れ(無償ストックオプションの場合)

(1) 付与時(公正価値を認識)

(借方)ストックオプション費用 ×××  
 /(貸方)新株予約権 ×××
  • 公正価値(付与日の株価を基準に算定)を「新株予約権」として資本の部に計上。
  • 付与時点では現金流出なし。

(2) 権利確定期間にわたる費用按分

(3年で確定する場合、毎期1/3ずつ費用化)

(借方)役員報酬費用 ×××  
 /(貸方)新株予約権 ×××

(3) 行使時(株式発行)

(借方)現金(行使価額分) ×××  
(借方)新株予約権     ×××  
 /(貸方)資本金・資本準備金 ×××

会計と税務のズレを理解する

ストックオプションでは、会計上の費用計上時期と税務上の損金算入時期が異なることが最大の特徴です。

区分会計上税務上
費用認識時期付与時から権利確定まで(期間按分)原則、行使時(給与等課税事由発生時)
損金算入の可否原則、費用計上可税制非適格SOのみ可。税制適格SOは損金不算入

このズレにより、一時的な税効果会計(繰延税金資産・負債)が発生します。
特に上場準備企業では、この差異調整を正しく行うことが監査対応上の要件になります。

注記・開示のポイント(会計上)

有価証券報告書・計算書類では、SOに関する情報開示が求められます。
主な注記事項は次のとおりです。

  • ストックオプションの付与数・行使価額・権利行使期間
  • 付与時の公正価値および算定方法(例:ブラック・ショールズモデル)
  • 期首・期末の残高、行使済数、失効数
  • ストックオプション費用の金額および対応する期間

※IPO準備会社では、J-SOX監査で「株主総会決議・取締役会決議との整合性」も確認されます。

実務上のよくある誤り

  1. 有償SOを“報酬費用”として処理してしまう
     → 有償SOは原則「資本取引」であり、費用にはなりません。
  2. 税制非適格SOで付与時に損金計上してしまう
     → 行使時まで損金算入不可(法人税法54条の2)。
  3. 費用計上と別表調整を忘れる
     → 会計費用を損金不算入にする必要あり。税効果計算も忘れずに。

まとめ:経理が押さえるべきチェックリスト

  • 税制区分(適格/非適格/有償)を確認したか
  • 付与時の公正価値を算定したか
  • 権利確定期間に基づく費用配分を行っているか
  • 税務上の損金算入時期(行使時)を把握しているか
  • 別表調整と税効果会計を行っているか
  • 計算書類にSO注記を開示しているか

おわりに

ストックオプションは、経営者報酬・従業員インセンティブ・資本政策・会計開示のすべてに影響する制度です。
「付与時の会計処理」から「行使時の損金算入」までを整理しておくことが、IPO準備企業や監査法人との対話をスムーズにします。

次回は、「ストックオプションの税務調整と別表14(4)の書き方」をテーマに解説します。


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