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ストックオプション付与における「新株予約権割当契約書」は何を担保するのか?制度設計と実務トラブルを分ける契約書の位置づけ

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新株予約権(SO)

ストックオプション(以下「SO」といいます。)を導入する際、多くの企業がまず検討するのは、
「どのような内容の新株予約権を、誰に、どれだけ付与するか」という制度設計です。

一方で、その内容を実務上どこまで担保できているかという点については、
十分に検討されないまま進んでしまうケースも少なくありません。

この実務上の担保装置となるのが、新株予約権割当契約書(付与契約書)です。
本コラムでは、「契約書は何のために存在するのか」という点から整理し、
条項設計における実務上の着眼点を解説します。

1.ストックオプションは「決議」だけでは完結しない制度

SOは、会社法上は新株予約権として発行されます。
株主総会または取締役会における発行決議により、制度としては成立します。

しかし、決議で定められるのは、あくまで以下のような抽象的・制度的事項です。

  • 新株予約権の数
  • 行使価額
  • 行使期間
  • 譲渡制限の有無
  • 割当対象者の範囲

一方で、個別の付与対象者との関係において、
どのような場合に行使でき、どのような場合に失効するのかといった点は、
決議事項だけでは十分にカバーできません。

そこで、決議内容を前提に、個別具体的な権利義務関係を確定させるための契約として、
新株予約権割当契約書が締結されます。

2.割当契約書の本質的な役割とは何か

新株予約権割当契約書の役割は、単なる「形式的な書面」ではありません。
実務的には、次の三点を担保する機能を持ちます。

(1) 制度設計を「個別の権利関係」に落とし込む

SOは制度としては一括設計されますが、
実際に権利を行使するのは個々の役員・従業員です。

割当契約書は、
「この人が、どの条件で、どこまでの権利を持つのか」を確定させる文書です。

(2) 想定外の事態における処理ルールを明確化する

  • 途中退職した場合
  • 解任・懲戒処分となった場合
  • M&Aにより会社が消滅した場合

このような事態は、発行時点では抽象的にしか想定されません。
割当契約書は、これらの局面における処理を事前に定義するためのツールです。

(3) 税務要件・会計処理との整合性を確保する

特に税制適格SOを意識する場合、
契約書の文言レベルで要件との齟齬が生じると、
制度全体が税制非適格と評価されるリスクがあります。

3.実務上、特に検討すべき主要条項

以下では、割当契約書において実務上トラブルになりやすい条項を中心に整理します。

(1) 行使期間の定め方

行使期間は、会社法上は比較的自由に設計できます。
しかし、税制適格SOを前提とする場合には、
付与決議日後2年経過から10年以内という枠内で設定する必要があります。

単に「10年間行使可能」と記載してしまうと、
起算点の誤りにより税務上問題となるケースがあるため、
起算日を明示した表現が重要です。

(2) ベスティング(段階的行使制限)

ベスティング条項は、
「いつ・どの割合で行使できるか」を制御するための規定です。

制度趣旨としては、

  • 長期的な関与を促す
  • 行使時期の集中を防ぐ

という点にありますが、
契約書上は、数値・期間を明確に特定することが不可欠です。

(3) 権利喪失事由(失効条項)

退職・解任時の扱いは、
割当契約書が存在しない、または曖昧な場合、
実務上の紛争に直結しやすい部分です。

特に注意すべきなのは、

  • 自己都合退職
  • 会社都合退職
  • 任期満了

などを一律に扱ってよいかという点です。

(4) 譲渡制限の位置づけ

新株予約権は、性質上は譲渡可能な権利です。
そのため、税制適格SOを想定する場合には、
譲渡禁止を契約上も明確に定める必要があります。

4.付与対象者ごとに異なる留意点

割当契約書は、誰に付与するかによっても設計の考え方が変わります。

取締役に付与する場合

  • 報酬性との関係(会社法361条)
  • 株主総会決議との整合性
  • 資本政策上の希薄化管理

が特に重要となります。

従業員に付与する場合

  • 付与基準の説明可能性
  • 退職時の処理ルール
  • 不公平感の抑制

といった観点から、
説明可能な契約構造が求められます。

外部協力者に付与する場合

税制適格要件の充足可否が、
ケースによって大きく異なります。
発行前の段階で、適格性を前提としない設計も視野に入れる必要があります。

5.雛形利用に潜む実務リスク

インターネット上には、多数の雛形が公開されています。
しかし、以下の点には注意が必要です。

  • 税制改正への未対応
  • 自社の資本政策と不整合
  • 決議内容との齟齬

割当契約書は、
「使えればよい書面」ではなく、「後から効いてくる書面」です。
雛形を使う場合であっても、必ず自社制度に即した検証が不可欠です。

まとめ

新株予約権割当契約書は、
ストックオプション制度の補助資料ではありません。

制度設計を、

  • 実際に行使され
  • 実際に課税され
  • 実際に紛争を防ぐ

ところまで落とし込むための、
実務上欠かせない重要な書類です。

ストックオプションの導入を検討する際には、
決議や制度概要だけでなく、
「その内容を、契約としてどう固定するか」という視点からの検討が不可欠です。

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