ストックオプション（SO）制度を導入する上場企業が増える中、「ストックオプションが発行されると株価が下がるのでは？」と気になる投資家や関係者も多いのではないでしょうか。
実際、ストックオプションの発行が株価にどのような影響を与えるのかについては、「希薄化の懸念」と「成長促進の期待」の両面から考える必要があります。
本記事では、上場企業におけるストックオプションの仕組みと、株価への影響について詳しく解説していきます。
ストックオプションとは？
ストックオプションとは、「あらかじめ決められた価格（＝行使価格）で、自社の株式を取得できる権利」のことです。この権利は、従業員や役員に対して付与されるもので、株価が上昇すればするほど大きな利益（キャピタルゲイン）を得られる仕組みになっています。
たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 企業が1株100円で購入できる権利を従業員に付与
- 企業の業績向上により株価が700円に上昇
- 従業員は、100円で購入し、700円で売却（差額600円が利益）
このように、ストックオプションは株価が上がるほど報酬額が増えるため、従業員のモチベーション向上につながります。しかし、株式数が増加すると株価に悪影響を与える可能性もあるため、発行の際には慎重な判断が求められます。
ストックオプションの発行が株価に与える影響
ストックオプションの発行による株価への影響は、「株式の希薄化」と「インセンティブ効果」の2つの視点から考える必要があります。
（1）希薄化による株価下落リスク
ストックオプションが行使されると、新株が発行され発行済株式総数が増加します。
これにより、1株あたりの価値が薄まる（=希薄化する）ため、株価が下落する要因になると考えられます。
〈希薄化のメカニズム〉
- SO行使により発行株式数が増加
- 1株あたりの利益（EPS）が低下
- 投資家が企業価値の低下を懸念し、株価が下がる
特に、大量のストックオプションが一度に行使されると短期的な株価の下落圧力が強まる可能性があります。
（2）インセンティブ効果による株価上昇要因
一方で、ストックオプションは企業成長を促進する手段としても機能します。
ストックオプションを付与された従業員や役員は、株価が上昇すれば利益を得られるため、企業の成長にコミットするインセンティブが強まります。
- 業績向上のためのモチベーションが高まる
- 生産性向上により企業の利益が拡大する
- 投資家からの評価が上がり、株価が上昇する
このように、長期的には株価を押し上げる効果があることも事実です。
企業の成長戦略としてのストックオプション
ストックオプションは、単なる報酬制度ではなく、企業の成長戦略として活用することが重要です。
株価を下落させないためのポイント
- 発行規模を適正にコントロール（大量発行を避ける）
- 市場の信頼を得るための適切な情報開示
- SO行使タイミングの分散（短期間での希薄化を防ぐ）
また、ストックオプションの発行がポジティブに受け取られるかどうかは、投資家の期待や企業の成長性によっても左右されます。
まとめ
今回の記事では、「ストックオプションが発行されると株価はどうなるのか？」について解説しました。
✔ ストックオプションの発行が株価に与える影響
- 株式の希薄化により短期的な株価下落リスクがある
- 一方で、従業員のモチベーション向上による成長促進効果もある
- 企業の成長戦略として適切に設計することで、株価にプラスの影響を与えられる
ストックオプションは、企業の成長を支える優れた仕組みである一方、発行の仕方によっては株価に悪影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、「株価の希薄化」と「インセンティブ効果」のバランスを考えた運用が重要となります。
今後、ストックオプションの発行を検討している企業の方や、投資家の皆さんは、ぜひこの点を意識しながら企業の動向をチェックしてみてください。
新株予約権の導入に関するご相談は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。
