未上場企業が税制適格ストックオプション(以下、適格SO)を発行する際、行使価額要件の判定には付与契約時点の株価評価が必要です。
通常は直前期末の決算情報をもとに評価しますが、場合によっては仮決算を組んで最新の財務状況で株価を再評価する必要があります。
本コラムでは、仮決算が必要となる条件と、その背景となる税務実務の考え方を整理します。
仮決算が必要となる背景
税制適格SOでは、「付与契約締結時の1株当たり価額」が行使価額要件の基準となります。
もし直前期末の財務状況から大きく変動している場合、その時価を反映しないと実際の株価より低い行使価額となり、税制非適格扱いとなるリスクがあります。
仮決算が必要となる具体的ケース
国税庁Q&Aや財産評価基本通達の取扱いによれば、次のいずれかに該当する場合は仮決算を組むことが求められます。
ケース1:純資産価額の急増
- 直前期末からSO付与契約日までに6カ月超経過しており、
- かつその日の純資産価額が直前期末の2倍超になっている場合
ケース2:期中の増資
- 直前期末からSO付与契約日までに株式発行による増資を行った場合
(上記ケース1に該当しない場合でも対象)
※この場合、直前期末の純資産価額に増資による払込金額を加算して評価可能です。
仮決算を行わない場合のリスク
仮決算を行わず、直前期末の財務データを基に評価した結果、実際の株価を下回る行使価額を設定してしまうと、行使価額要件不充足=税制非適格SOとなります。
これにより、行使時に給与所得課税(最大55%)が発生するため、制度上のメリットが失われます。
実務での判断フロー
- 付与契約日の決定
- 直前期末からの日数経過確認(6カ月超か)
- 純資産価額の増加率試算(2倍超か)
- 期中増資の有無確認
- 該当すれば仮決算実施 → 株価評価更新
このフローを社内のSO発行スケジュールに組み込むことで、要件逸脱を防止できます。
まとめ
仮決算の要否は、期間経過・純資産増加・期中増資の3要素で判断します。
IPO準備企業や資金調達が活発な企業では特に、SO発行計画の初期段階から税務・会計担当者が仮決算要否をチェックする体制を整えることが重要です。