ストックオプション(SO)を発行する際、その行使価額や発行価額が不当に低い場合には「有利発行」に該当するおそれがあります。
有利発行と判断された場合には、株主総会の特別決議が必要となるため、発行時の価格設定には慎重な検討が求められます。
有利発行とは
有利発行とは、会社が第三者に対して通常の経済合理性を欠いた有利な条件で新株や新株予約権を発行することを指します。
ストックオプションの場合、発行価額や行使価額が公正価額を下回ると有利発行とみなされます。
有利発行該当性の判断基準
有利発行に該当するかどうかは、発行時の公正価額との比較によって判断されます。
| 区分 | 判断基準 | 結果 |
|---|---|---|
| 公正価額 ≦ 発行価額 | 有利発行に該当しない | 通常の発行として認められる |
| 公正価額 > 発行価額 | 有利発行に該当 | 株主総会の特別決議が必要 |
公正価額は、一般的に外部評価機関による株価算定または数理モデル(ブラック・ショールズ・モデル等)を用いて算定されます。
3. 特に注意が必要なケース
- 発行価額を「無償(0円)」とする場合
- 行使価額が発行時の株価を大きく下回る場合
- 役員や特定の関係者のみを対象として発行する場合
これらの場合には、経済的合理性を欠く取扱いと判断される可能性が高く、株主総会の承認が不可欠となります。
株主総会決議の要否
有利発行と判断される場合は、株主総会での特別決議が必要です。
- 公正価額を下回る条件で発行する合理的な理由を明示
- 議事録上に「有利発行である旨」とその理由を明記
- 株主に対して説明責任を果たすことが求められる
とくに、上場企業ではディスクロージャー上の開示義務があるため、発行根拠の合理性を文書で残すことが実務上のポイントとなります。
実務上の留意点
- 発行価額や行使価額の設定根拠(算定書など)を保存しておくこと。
- 株主総会での承認を得る場合、議事録には合理的な理由を明確に記載。
- 有償SOの場合でも、発行価額が公正価額と乖離していれば有利発行に該当する。
まとめ
ストックオプションの発行は、インセンティブ設計として有効な手段である一方、発行条件を誤ると「有利発行」に該当し、手続違反のリスクを伴います。
公正価額との乖離がないよう慎重に設計し、必要な場合は株主総会での特別決議と説明責任を果たすことが重要です。
