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ストックオプション課税の最新動向とは?信託型SO・税制適格無償SOを中心に整理

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新株予約権(SO)

2023年7月の国税庁Q&Aおよび2024年の税制改正大綱により、ストックオプション(SO)に関する税務実務は大きく変化しました。
中でも信託型ストックオプションの課税タイミング税制適格無償ストックオプションの評価方法の明確化は、スタートアップ企業や支援者にとって極めて重要な論点です。

本コラムでは、従来からの通説と最新ルールの違い、制度設計上の注意点を実務視点で整理します。

信託型ストックオプションの課税は「権利行使時」に発生

かつて「信託型SOは譲渡所得課税が基本」との認識が一般的でしたが、2023年国税庁Q&Aにより「給与所得課税」が明確化されました。

【変更点①】課税タイミングが「行使時」に変更

  • 行使価額 + 発行価額と行使時点の株価との差額給与所得として課税
  • 所得税は総合課税で最大45%(復興特別所得税等含む55.945%)の累進課税
  • 社会保険料は非対象

例:行使価額10,000円・行使時点の株価30,000円・発行価額500円
→ 課税対象:30,000円 − 10,000円 − 500円 = 19,500円(給与所得)

【変更点②】発行会社に源泉徴収義務が発生

  • 所得税・住民税の源泉徴収対象
  • ただし、社会保険料は非課税扱い(労基法上の「賃金」には該当しない)

【実務対応のポイント】

  • 権利行使時に納税資金が必要
  • 分割行使等により税率を平準化する設計が有効
  • 信託からSOを個人に移転する際には総会決議・契約書変更・登記実務に注意

税制適格無償ストックオプションに関する取扱い変更

【変更点①】行使価額の「セーフハーバー」明確化

2023年7月の国税庁Q&Aでは、「発行時の純資産額等」を基準に行使価額を設定すれば、税制適格SOの時価要件を満たす旨が明記されました。

ケース評価方法
同族株主・内部役職員純資産価額方式・併用方式など
社外協力者・非同族配当還元方式(※無配企業では低額算定可)

評価結果がマイナスならば、行使価額1円設定も可能

【変更点②】優先株式発行会社への配慮

  • 優先分配権の控除を認める評価手法も明確化され、優先株式型J-KISS等のケースにも対応可能に

評価差額は会計上の費用計上対象となる点に注意

たとえ税務上の要件を満たしても、会計上は時価評価額(バリュエーション)と行使価額の差額について、株式報酬費用(販管費)として計上が必要になります。

【例】

  • VC調達後の株価:1株あたり5,000円
  • セーフハーバー評価により行使価額:1株あたり1,200円
    → 差額3,800円×SO付与数分が費用計上対象

この点はIPO時のEPSやバリュエーションに直接影響するため、評価・設計段階から公認会計士等と連携が必要です。

信託型SOの制度設計に関する最新FAQ(2023年9月時点)

国税庁・経産省資料やSOICO等の実務家による確認結果により、以下の取扱いが明確となりました。

質問解答要旨
待機期間2年の追加設定は可能か?株主総会決議で可能(非適格→適格へ)
適格化のための発行要項変更は登記事項か?商業登記上は変更登記が必要
セーフハーバーを満たすよう行使価額引上げは可能か?株主総会決議により可能
SOの受益者指定時、贈与課税リスクは?受益権を個人が任意に指定できない限り発生しない

令和6年度税制改正での追補改正(2024年4月施行)

【改正①】権利行使価額の年間上限が拡大

  • 設立5年未満企業:1,200万 → 2,400万円
  • 設立5年以上20年未満・非上場:3,600万円まで

【改正②】保管委託要件の緩和

  • 譲渡制限株式を自社で管理する場合、証券会社への委託不要
  • 非上場M&A・IPO延期等への対応が柔軟に

SO設計では税務・会計・法務の三位一体対応が必須

2023年以降の制度改正により、SOの税務取扱いは従来の実務から大きく変化しています。
「課税関係」だけでなく、「費用計上」や「要件適合性」まで見据えた設計が求められる時代となりました。

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