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国税庁の最新見解で明確化!税制適格ストックオプションの普通株式価額算定ルールとは?

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株価算定

はじめに

未上場企業がストックオプション(SO)を発行する際、特に**税制適格ストックオプション(税制適格SO)を活用する場合、適切な1株当たりの価額(時価)**をどのように算定するかが重要なポイントになります。

これまで、税制適格SOの権利行使価額を決定する際の明確な算定ルールがなかったため、特に種類株式(優先株式)を発行している企業では、どのように普通株式の価額を算定するべきか不透明な部分がありました。その結果、企業側が慎重に高めの価格を設定せざるを得ない状況が続いていました。

しかし、2023年7月に国税庁が発表した通達により、税制適格SOの権利行使価額の算定方法が明確化されました。この新ルールにより、これまでの実務よりも低い行使価額を設定できる可能性が生まれ、SOを活用したインセンティブ設計の幅が広がっています。

本記事では、国税庁の最新見解を踏まえた税制適格SOの普通株式価額の算定ルールについて詳しく解説します。

税制適格ストックオプションとは?

ストックオプションとは、あらかじめ定められた価格で、一定期間内に会社の株式を取得できる権利を指します。その中でも、税制適格SOは特定の要件を満たすことで、税制上の優遇措置を受けられるものです。

税制適格SOの主な要件:

  1. 対象者:発行会社の取締役・従業員に無償で付与されること
  2. 行使期間:付与決議日から2年経過後~10年以内(一定条件で15年まで延長可)
  3. 行使価額付与契約時の1株当たりの価額相当額以上であること
  4. 年間行使上限:年間1,200万円まで
  5. 譲渡制限:譲渡は禁止
  6. 株式交付の適法性:会社法に違反しないこと
  7. 金融機関での管理:取得した株式は証券会社等に預託されること

このうち、今回の通達で明確化されたのが「行使価額の算定ルール」です。

従来の課題:税制適格SOの行使価額の不透明性

税制適格SOの行使価額は、「付与契約時の時価以上」と定められていますが、未上場企業では株価の市場価格が存在しないため、適切な時価の算定が難しいという問題がありました。

特に、未上場企業が普通株式と優先株式を併用して資金調達しているケースでは、どの基準で普通株式の価額を算定するのかが明確ではなく、実務上の不確実性が大きかったのです。

その結果、多くの企業は税務リスクを回避するために、慎重に高めの行使価額を設定せざるを得ない状況でした。

国税庁通達による明確化:新たな株価算定ルール

2023年7月に発表された国税庁通達により、税制適格SOの行使価額を決定する際の具体的な算定方法が示されました。

1. 純資産価額方式の適用

通達では、税制適格SOの1株あたりの行使価額の算定において、純資産価額方式を適用することが認められました

【純資産価額方式の算定方法】

  1. 会社の純資産価額(資産 – 負債)を算定
  2. 発行済株式総数で割って1株当たりの価額を算定
  3. 算定した価額を「最低行使価額」とする

この方式により、権利行使価額が大幅に低下する可能性が生まれました。

2. 1円行使価額の可能性

通達では、純資産価額方式に基づく計算の結果、株価が著しく低額またはマイナスとなる場合には、権利行使価額は1円以上の任意の額で設定可能とされました。

例えば、会社の純資産価額がマイナスになった場合、行使価額を1円とすることも可能です。

従来の実務では
権利行使価額を市場での投資価格(第三者割当増資時の株価など)を基準に設定するケースが多く、結果的に行使価額が高めになっていました。

新ルールでは
純資産価額方式を用いることで、行使価額を低く抑えることが可能となり、SOの魅力が向上します。

SOの行使価額を低く設定するメリット

  1. 従業員・役員へのインセンティブ強化
    • SOの行使価額を低く抑えられるため、従業員や役員の利益が最大化され、優秀な人材の獲得・定着に寄与。
  2. 税務リスクの低減
    • 明確なルールが示されたことで、税務リスクを回避しつつ、適正な行使価額を設定可能
  3. 企業の資金負担を軽減
    • 低い行使価額でSOを発行することで、企業のキャッシュフローへの影響を抑えつつ、魅力的な報酬制度を導入可能

今後の注意点と実務対応

今回の通達でSOの行使価額の算定方法が明確化されましたが、実務上は以下の点に注意が必要です。

純資産価額方式を選択する場合、最新の財務状況を正確に反映すること
直前の資金調達における増資価格との整合性に注意すること
税務当局の判断に備え、適切な株価算定の根拠を残すこと

特に、IPO準備企業や優先株式を発行している企業は、種類株式の影響を考慮した算定が必要になります。


まとめ

今回の国税庁の通達により、税制適格SOの権利行使価額の算定方法が明確化され、純資産価額方式を用いた低額設定が可能となりました。

この新ルールにより、未上場企業はSOをより柔軟に設計できるようになり、従業員・役員へのインセンティブとして活用しやすくなりました。

税制適格SOの活用を検討している企業
ストックオプションの設計に悩んでいる企業

これらの企業は、最新のルールを踏まえて適切なSO制度を設計することが重要です。


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