役員に対するストックオプション(新株予約権)の付与は、スタートアップや成長企業において一般的な手法となっています。一方で、従業員向けとは異なり、会社法上の報酬規制や税務上の取扱いが複雑になりやすく、設計段階での判断を誤ると、後から修正が難しい制度でもあります。
本コラムでは、役員向けストックオプションについて、制度の可否・種類・税務・手続を中心に、実務上の整理ポイントを解説します。
役員にストックオプションを付与することは可能か
結論から言えば、役員へのストックオプション付与は可能です。
ただし、会社法上は「職務執行の対価」としての役員報酬に該当するため、原則として株主総会の報酬決議が必要となります。
従業員向けストックオプションが賃金(給与)として整理されるのに対し、役員向けは報酬規制の枠組みに入る点が、最も重要な違いです。
ストックオプションの基本構造
ストックオプションとは、会社が役員等に対して、
あらかじめ定めた価格で自社株式を取得できる権利(新株予約権)を付与する制度です。
実務上は、以下の流れで整理されます。
- 新株予約権の付与
- 一定期間経過・条件達成後の権利行使
- 株式取得後、株式売却による利益確定
株価上昇と報酬が連動するため、役員にとっては企業価値向上へのインセンティブとなります。
従業員向けと役員向けの違い
役員向けストックオプションの特徴は、契約関係と決議構造にあります。
| 項目 | 従業員 | 役員 |
|---|---|---|
| 契約関係 | 雇用契約 | 委任契約 |
| 法的性質 | 賃金 | 職務執行の対価(報酬) |
| 主な決議 | 新株予約権の発行決議 | 発行決議+報酬決議 |
| 制度設計 | 比較的柔軟 | 厳格な説明が必要 |
特に非公開会社であっても、役員報酬としての説明責任は軽減されません。
役員報酬として活用するメリットと留意点
主なメリット
・現金支出を抑えつつ報酬設計が可能
・株主と同じ目線での経営判断を促しやすい
・創業期・成長期における人材確保に有効
主な留意点
・行使時に株式が発行されることによる希薄化
・短期的な株価重視に傾くリスク
・ガバナンス上の説明が必要
そのため、行使条件や付与時期を含めた設計が重要になります。
役員向けストックオプションの主な類型
無償ストックオプション(税制適格・非適格)
会社から無償で付与するタイプです。
租税特別措置法の要件を満たすか否かで、課税関係が大きく異なります。
・税制適格:売却時に譲渡所得課税
・税制非適格:行使時に給与所得課税
有償ストックオプション
役員が対価を支払って新株予約権を取得するタイプです。
公正価額での発行であれば、報酬性が否定される可能性があり、報酬決議が不要となる点が実務上の特徴です。
株式報酬型ストックオプション
行使価額を極めて低く設定し、退職時の行使を前提とする設計です。
退職慰労金の代替として利用されるケースが多く見られます。
税務上の整理ポイント
役員向けストックオプションでは、課税タイミングの整理が最重要論点となります。
・税制適格:原則として行使時非課税、売却時課税
・税制非適格:行使時に給与所得課税
・法人側:損金算入可否は制度類型により異なる
特に非適格の場合、現金収入のない段階で課税が生じる点には注意が必要です。
付与までの基本的な手続フロー
- 株主総会での報酬決議・発行決議
- 取締役会による割当決議
- 新株予約権割当契約書の締結
- 新株予約権原簿の作成
- 発行後2週間以内の登記申請
制度設計と手続は常にセットで検討する必要があります。
付与対象に関する実務上の注意
・社外取締役:付与自体は可能だが、説明責任がより重要
・監査役:独立性・利益相反の観点から慎重な判断が必要
・外部協力者:税制適格の可否を含めた整理が必要
付与対象ごとに、制度趣旨との整合性を検討することが求められます。
まとめ
役員向けストックオプションは、
報酬制度・資本政策・ガバナンスが交差する制度です。
・役員報酬としての位置づけ
・税務上の課税タイミング
・会社法上の決議と登記
・将来の資本構成への影響
これらを踏まえ、導入段階から専門家を交えた設計を行うことが、実務上のリスク回避につながります。
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