新株予約権を役員報酬として発行する場合、会社法上の報酬決議と新株予約権の発行決議という二つの決議手続が関係します。
手続を誤ると登記補正や発行無効のリスクがあるため、発行目的を「報酬」とする場合は特に注意が必要です。
新株予約権発行と報酬決議の関係
会社法上、取締役・監査役等の役員報酬を支給するには、株主総会の決議が必要です(定款に定める場合を除く)。
金銭による報酬だけでなく、新株予約権を付与する場合も「報酬」に該当します。
したがって、役員報酬としてストックオプションを発行する場合、
- 新株予約権の発行決議(会社法236条等)
- 役員報酬の決議(会社法361条)
の両方を適法に行う必要があります。
発行時の決議の流れ
ストックオプションを役員報酬として発行する場合、一般的な手続の流れは以下の通りです。
- 株主総会で「役員報酬として新株予約権を付与する旨」を決議
- 取締役会で新株予約権発行の割当決議
- 対象となる役員への割当を決定し、通知を行う
このように、株主総会で報酬の枠を設定し、取締役会で具体的な発行条件を定める形が一般的です。
監査役への付与の注意点
監査役に新株予約権を報酬として付与する場合、
監査役の報酬は監査役の協議によって決定されることが原則とされています。
したがって、監査役に対する新株予約権付与は、
- 株主総会で報酬枠(上限)を設定し、
- 各監査役の配分は監査役の協議により決定
という二段階の決定手続が必要になります。
決議内容の整合
報酬決議と発行決議は、それぞれ異なる法的根拠に基づいて行われますが、
実質的には同一の取扱い対象(=役員報酬としての新株予約権)に関するものです。
したがって、
- 株主総会決議と取締役会決議の内容に齟齬がないこと
- 報酬総額および個別配分の整合が取れていること
を確認したうえで登記申請を行う必要があります。
実務上の留意点
- 議事録には「新株予約権を報酬として交付する旨」を明記する。
- 報酬額の上限を金額ベースで決議しておくと、監査上も説明が容易。
- 登記に際しては、株主総会議事録と取締役会議事録の整合性を審査される。
まとめ
役員報酬として新株予約権を発行する場合、報酬決議と発行決議の二重構造に注意が必要です。
とくに監査役への付与では、監査役の協議が必須となり、一般の取締役付与とは手続が異なります。
議事録の整合と報酬額の明確化を徹底し、会社法上の手続要件を確実に充足することが実務上のポイントです。