会社法施行以降、役員に対して新株予約権を付与する場合は、「役員報酬」として位置づけられます。
それまでは報酬とされていなかったため、制度改正は実務に大きな影響を及ぼしています。
役員報酬としての新株予約権の位置づけ
新株予約権には経済的価値があるとされ、これを役員に与えることは「財産の支給」と解されています。
この価値を「公正価額」と呼び、理論構成としては以下の二つの考え方があります。
- 新株予約権を現物支給する方式
- 新株予約権の発行価額を公正価額とし、同額の現金を報酬として支給 → その現金を払込金に充当する方式(相殺構成)
いずれの場合も実際に現金の授受はありませんが、報酬決議の根拠づけが異なるため、株主総会での決議の仕方に影響します。
報酬決議の枠組み
役員報酬としての新株予約権は、従来の金銭報酬枠とは別枠で決議する必要があります。
例えば「新株予約権の発行分として上限○○円」といった形で総会決議を行い、その範囲で割当てを行うことになります。
公正価額と株価変動のリスク
新株予約権の公正価額は、割当日における株価を基に算出されます。
したがって、発行決議後に株価が大幅に変動すると、次のようなリスクが発生します。
- 株価が上昇 → 公正価額が想定以上に高騰 → 総会決議で定めた上限額を超過するおそれ
- 上限額を超えれば、違法な報酬付与とみなされるリスク
実務では、申込株数を減らして上限額を超えないように調整するなどの対応が取られています。
実務上の留意点
- 決議時点で十分な余裕を持った上限額を設定
- 割当日までの株価変動を想定し、必要に応じて申込数を調整
- 金銭報酬と新株予約権報酬の枠を明確に区別
- 報酬決議と新株予約権発行決議の手続を混同しない
まとめ
役員報酬としての新株予約権発行は、会社法の解釈変更により、「報酬決議」と「新株予約権発行決議」の両立が必須となりました。
さらに、公正価額を基準とする以上、株価変動による報酬額の増減リスクを常に意識する必要があります。
制度設計時には、余裕を持った決議内容と、発行実務における柔軟な対応を組み合わせることが求められます。