近年、企業が福利厚生の一環として「従業員持株会」を導入するケースが増えています。
これは、従業員が自社の株式を定期的に購入し、資産形成を支援する制度ですが、「実際に加入すべきか?」と悩む方も多いのではないでしょうか?
本記事では、従業員持株会の仕組みやメリット・デメリット、導入時のポイントを詳しく解説します。
従業員・企業の双方にとっての利点と注意点を整理し、加入すべきかどうかの判断材料を提供します。
従業員持株会とは?
従業員持株会とは、企業の従業員が自社の株式を定期的に購入し、資産形成を行う制度です。
会社が一定額の奨励金を上乗せしてくれるケースも多く、一般的な株式投資よりも有利な条件で株を取得できる仕組みになっています。
この制度の目的は、従業員に株主としての意識を持たせ、企業価値の向上に貢献してもらうことにあります。
▼ 仕組みのポイント
- 毎月一定額を給与天引きで積立
- 持株会名義で株式を保有(個人ではなく持株会が管理)
- 奨励金制度(会社が一定の割合を補助)
- 配当金や株価上昇による利益(キャピタルゲイン)を得られる
- 株主総会での議決権は持株会が行使
このように、企業の成長とともに従業員も恩恵を受けられる制度として、多くの企業で採用されています。
従業員持株会の仕組み
従業員持株会は、主に「組合型」の仕組みを採用しており、組合員(従業員)が出資して株式を購入します。
▼ 一般的な運用の流れ
① 毎月、給与から一定額を天引きして拠出
② 持株会がまとめて企業の株式を購入
③ 各従業員の拠出額に応じて持分を配分
④ 奨励金(インセンティブ)を企業が支給(例:拠出額の10〜20%を会社が上乗せ)
⑤ 従業員が退職時に株式を個人口座に移管または売却
この制度によって、従業員は無理なく少額から投資できる仕組みとなっています。
【従業員側】従業員持株会のメリット
従業員にとって、持株会には次のようなメリットがあります。
① 簡単に資産形成ができる
給与天引きで自動的に積み立てができるため、投資の知識がなくても手軽に資産形成が可能です。
また、会社の成長とともに配当金や株価上昇の恩恵を受けることもできます。
② 奨励金がもらえる(インセンティブ制度)
多くの企業では、従業員の購入額に対して10〜20%の奨励金を上乗せしています。
例えば、月5,000円拠出+奨励金10%なら、5,500円分の株式を購入できることになります。
③ 少額から投資が可能
通常、株式は100株単位での売買が必要ですが、従業員持株会では1株単位での購入が可能。
そのため、少額(1,000円〜)から投資を始められます。
④ 配当金・キャピタルゲインを得られる
企業の業績が好調であれば、配当金を受け取れるほか、株価が上がった際に売却すれば利益(キャピタルゲイン)を得られます。
4【企業側】従業員持株会のメリット
企業にとっても、従業員持株会の導入には次のようなメリットがあります。
① 福利厚生の充実
資産形成の支援制度として従業員満足度が向上し、優秀な人材の確保につながります。
② 安定した経営基盤の確保
従業員が自社株を長期保有することで、安定株主の確保につながり、敵対的買収(TOB)への防衛策にもなります。
③ 従業員のモチベーションアップ
従業員が株主となることで、経営視点を持ち、企業の成長を意識するようになります。
④ 事業承継対策になる
未上場企業では、経営者の株式を持株会に譲渡することで、スムーズな事業承継が可能になります。
5. 【従業員側】従業員持株会のデメリット
一方で、従業員にとって以下のデメリットも考えられます。
① 株主優待がない
持株会名義での購入になるため、株主優待の対象外となります。
② 会社の業績が悪化するとリスクが大きい
給与と投資先が同じ会社のため、業績悪化時に給与減少+株価下落の二重のリスクを抱えることになります。
③ 株式をすぐに売却できない
持株会の制度上、売却手続きに時間がかかるため、急な資金が必要なときに対応しにくいです。
6. 【企業側】従業員持株会のデメリット
企業側にとっても、いくつかの注意点があります。
① 会社支配権の低下
持株会の保有比率が高まると、経営陣の支配権が低下する可能性があります。
② 配当問題
業績が悪化すると、配当が減少し、従業員のモチベーション低下を招くことがあります。
③ インサイダー取引リスク
従業員は業績情報を事前に知ることがあるため、インサイダー取引規制に注意が必要です。
まとめ|従業員持株会は入るべき?
従業員持株会は、資産形成の手段として有効ですが、会社の業績リスクも考慮する必要があります。
メリットとデメリットを理解した上で、加入を検討しましょう。
特に、奨励金が充実している場合は、資産形成の観点から加入する価値が大きいといえます。
一方で、会社の経営状況や株価の変動リスクにも注意が必要です。
✔ 奨励金があるなら加入のメリット大
✔ 資産の分散が重要(自社株だけに依存しない)
✔ 業績悪化時のリスクを想定する