新株予約権の承継は、吸収合併・株式交換・株式移転といった組織再編の場面で避けて通れない論点です。とりわけ、完全子会社の新株予約権を残すと100%親子関係が崩れるため、実務では承継または消滅の処理が不可欠となります。今回は最終的に、登記申請と添付書類に焦点を当て整理します。
株式移転計画に定めて承継させる場合
- 登記申請
株式移転による設立登記と、新株予約権の消滅登記を同時に申請。 - 登記事項
株式移転完全親会社の設立登記事項に「承継した新株予約権の内容」を記載。 - 添付書類
通常の新株予約権発行登記に必要な書類(取締役会議事録・募集事項決定書など)は不要。株式移転計画に記載された内容をそのまま登記すれば足ります。
※ただし、承継対象の新株予約権の一部が既に消滅している場合には、事前に変更登記を済ませて整合性を取る必要があります。管轄が異なる場合の処理には注意を要します。
株式移転とは別手続で新株予約権を承継させる場合
- 流れ
①株式移転の設立登記 → ②その後、新株予約権発行手続(取締役会決議・株主総会決議等) → ③割当契約締結。 - 特徴
時間と手間はかかるが、既存の新株予約権者以外にも割当可能(株主割当・第三者割当の選択肢)。 - 添付書類
通常の募集新株予約権発行と同様の添付書類が必要。
既存新株予約権の抹消登記
- 取得条項による消滅
会社が新株予約権を取得・消却した場合は、登記原因「消滅」、添付は委任状のみ。 - 放棄による消滅
東京法務局では「登記原因:放棄」として受付可能。その場合、放棄証書が添付必要とされる運用。
ただし、他の法務局では「原因は消滅にして」と補正を求められる例もあり、実務運用に差がある。
実務での留意点
- 法務局の対応差
「放棄」と「消滅」の取扱い、添付書類の要否など、管轄によって見解が異なる。申請前に必ず確認すべきポイント。 - 税務への影響
ストックオプション目的の新株予約権では、承継や消滅が課税関係に直結。必ず税務の専門家確認が必要。 - 戦略的選択
シンプルに済ませたい場合は株式移転計画に承継条項を盛り込むのが一般的。柔軟な割当を行いたい場合は別手続方式を選択することもある。
まとめ
新株予約権の承継は、「計画に組み込むか」「別手続きで行うか」の選択と、それに応じた登記実務・添付書類の整備が核心です。さらに、既存新株予約権の抹消原因をどう扱うかは、法務局ごとの実務差が残る論点。税務影響も含め、法務局・税理士双方への事前確認が不可欠です。