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新株予約権の発行価額・行使価額の決議方法と登記実務の変遷

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新株予約権(SO)

新株予約権の発行登記は、一見すると形式的な手続きに思われがちですが、決議の仕方や登記内容によっては、将来の行使や適格性に大きな影響を及ぼす場合があります。
特に「発行価額・行使価額を計算式で決議した場合の登記事項」をめぐっては、過去に実務運用が二転三転し、登記官・司法書士双方を悩ませてきました。

計算方法で決議する理由

上場会社や上場準備会社がストックオプション目的で新株予約権を発行する場合、行使価額は「発行時の株価以上」でなければなりません。
ところが、株主総会や取締役会で決議する時点では発行日の株価は確定していないため、「計算方法」で決議するのが通常です。

決議例

  • 「行使価額は、新株予約権発行日前1か月間の終値平均に1.05を乗じた額。ただし発行日の終値がこれを上回る場合は当日の終値とする」

このようにしておけば、発行日を迎えて株価が判明すれば、客観的に具体的金額を計算できます。

実務取扱いの変遷

かつての取扱い

  • 計算方法で決議した場合でも、登記申請時には実際の株価を当てはめて具体的金額で登記していた

その後の変更

  • 「会社や司法書士が計算した結果を無条件に信頼して登記するのは妥当か」という問題意識から、
  • 一時期は計算式そのものを登記する運用に変更

さらに元に戻る

  • 実務上の不満が強く、専門家から民事局に働きかけが行われた結果、
  • 「具体的金額で登記してよい」と再度解釈変更
  • ただし大々的には発表されず、専門誌記事やセミナーで静かに周知されるに留まった

現場実務の課題

  • 計算方法だけを登記すると、登記簿を見ても具体的価額が分からない
  • 具体的価額だけを登記すると、計算根拠が見えず公示力が弱まる
  • 実際には、計算式と計算結果を併記する形が望ましいと考えられている

また、計算根拠資料(株価証明や計算書類)は法定添付書類ではないため、法務局によって要求水準に差がある点も実務家を悩ませています。

第4章:実務上の留意点

  1. 株主総会・取締役会決議の文言を精査
    • 「計算方法のみ」ではなく、登記事項として明確になるよう配慮
  2. 株価証明等の準備
    • 添付不要とされる局もあるが、用意しておいた方が安全
  3. クライアントへの説明
    • 運用が変遷してきた経緯を踏まえ、将来の修正リスクをあらかじめ伝える

まとめ

新株予約権の発行価額・行使価額をめぐる登記事務は、ここ10数年の間に「具体的金額で登記 → 計算式で登記 → 再び具体的金額で登記可」という揺り戻しを経験しました。
実務家としては、どちらの方式にもメリット・デメリットがあることを理解した上で、計算式と計算結果を併用する記載証拠資料の整備を徹底することが、最も安全な対応といえます。