新株予約権を発行する際には、登記簿に「発行価額」および「行使価額」を正確に記載する必要があります。
会社法施行以降、登記実務の取扱いは一時的に変更されましたが、現在では再び「具体的な金額を登記する方法」に統一されています。
発行価額と行使価額の違い
| 項目 | 意味 | 登記上の位置づけ |
|---|---|---|
| 発行価額 | 新株予約権を取得する際に払い込む金額 | 新株予約権の内容として登記 |
| 行使価額 | 新株予約権を行使して株式を取得する際の1株あたりの価格 | 新株予約権の目的株式の内容として登記 |
発行価額と行使価額は混同されやすいですが、登記上は明確に区別して記載する必要があります。
かつての登記運用
会社法施行直後は、行使価額等を「計算式のまま登記する」という取扱いがなされていました。
たとえば、
「行使価額は、発行日前1か月間の終値の平均値に1.05を乗じた金額とする」
といった決議文を、そのまま登記簿に記載していました。
しかし、登記官が計算内容を確認できず、公示としての意味を欠くことから、
この運用には実務上の混乱が生じました。
その後、関係機関の協議により、具体的な金額を記載する従前の方式に戻すことが確認され、
現在は発行価額・行使価額ともに「数値で登記する」方法に統一されています。
現在の取扱い
現在の登記実務では、次のように整理されています。
- 発行価額は、発行決議で定めた具体的な金額を記載する。
- 行使価額は、発行日(または割当日)の株価に基づき計算した金額を記載する。
- 計算式を決議している場合でも、実際の株価を当てはめた金額を登記簿に記載する。
実務上の留意点
- 登記申請書および議事録には、具体的な金額を明示すること。
- 計算式や理論モデルの内容は登記の対象外であり、添付書類にも不要。
- 発行価額と行使価額は、登記簿上でも明確に区分すること。
まとめ
新株予約権の登記事項における発行価額および行使価額は、
現在、いずれも「具体的な金額」を登記する運用に統一されています。
これは、登記簿の明確性と公示力を確保するためのものであり、
決議段階で金額を明確に定めることが、円滑な登記実務につながります。
