新株予約権の発行と登記の仕組み
新株予約権には「割当日」と「払込み期日」が区別されています。
- 割当日:新株予約権が発行され、引受人に割当てられる日
- 払込み期日:割当を受けた者が払込みを行う期限
重要なのは、払込みがなかったとしても割当てにより新株予約権は発行されたものと扱われ、登記が必要になる点です。
株式発行とは異なり、「払込みがなければ発行されない」という仕組みにはなっていません。
払込み期日と消滅の関係
払込み期日が経過した場合、新株予約権は会社法287条に基づき消滅します。
具体的には以下のパターンがあります。
- 割当日前を払込み期日とした場合 → 新株予約権は発行されない
- 割当日以降かつ行使期間開始日前 → 期日経過により消滅
- 行使期間開始日以降を払込み期日とした場合 → 払込みをしなければ行使できず、期日経過で消滅
- 払込み期日を定めなかった場合 → 行使期間到来と同時に消滅
いずれにせよ、発行された以上、払込みの有無にかかわらず登記義務が発生することに注意が必要です。
区分 | 払込み期日の設定 | 結果 |
---|---|---|
① | 割当日より前の日 | 新株予約権は発行されない(商業登記ハンドブック第3版329頁)※発行登記の際は払込み証明書が必要 |
② | 割当日以降〜行使期間開始日前 | 払込み期日経過により消滅(会社法287条) |
③ | 行使期間開始日以降の日 | ②と同じ。払込みがない限り行使不可、期日経過で消滅 |
④ | 払込み期日を定めない場合 | 行使期間の到来と同時に消滅 |
実務上の注意点
- 発行=登記義務:払込みがなかったからといって「発行していない」と扱うことはできない。
- 消滅時期の管理:払込み期日を過ぎれば自動的に消滅するが、その日付を明確に把握しておく必要がある。
- 附属書類の保存:発行内容を確認できるのは附属書類であり、保存期間を過ぎると証拠が失われるため、発行経緯の記録管理が不可欠。
まとめ
新株予約権は株式とは異なり、払込みがなくても発行されたと扱われ登記義務が生じる点に最大の特徴があります。
そして払込み期日の経過により消滅するものの、その過程を適切に把握・記録していなければ、将来的に大きな混乱を招きかねません。
新株予約権を取り扱う際には、
- 発行と登記のタイミング
- 払込み期日と消滅の関係
- 記録保存の徹底
この3点を意識することが実務上の要諦といえます。