新株予約権(ストックオプション、第三者割当型新株予約権、新株予約権付社債など)を発行した場合、株式会社には新株予約権原簿の作成義務があります。
発行決議や登記に注目が集まりがちですが、会社法上は帳簿管理も明確に規定されています。本稿では、会社法の条文構造に基づき、新株予約権原簿の法的位置づけ、記載事項、名義書換の整理を行います。
1.新株予約権原簿の法的根拠
会社法第249条は、会社に対し、新株予約権原簿の作成および備置を義務付けています。
同条の趣旨は、新株予約権者およびその内容を明確にすることにあります。
株主名簿が株主の権利関係を確定する帳簿であるのと同様、新株予約権原簿は新株予約権者の権利関係を明らかにするための法定帳簿です。
新株予約権を発行した場合、遅滞なく原簿を作成しなければなりません。
2.新株予約権原簿の役割
(1)権利者の確定
新株予約権原簿には、誰がどの内容の新株予約権を保有しているかが記録されます。
譲渡・行使・消滅などが生じた場合も、原簿の記載を更新する必要があります。
(2)譲渡に関する対抗関係
会社法第255条以下は、新株予約権の譲渡およびその効力要件を定めています。
原簿の名義書換は、譲渡の対抗関係において実務上重要な意味を持ちます。
3.新株予約権の譲渡と原簿の名義書換
新株予約権の譲渡は、証券発行の有無によって扱いが異なります。
① 新株予約権証券を発行している場合
記名式証券
- 原簿の名義書換が必要
- 譲受人単独で請求可能
無記名式証券
- 原簿の名義書換は不要
- 証券の交付によって譲渡の効力が生じます
② 新株予約権証券を発行していない場合
- 原簿の名義書換が必要
- 譲渡人および譲受人の共同請求が必要
証券不発行会社では、この共同請求型が一般的です。
4.新株予約権原簿の記載事項
会社法第249条は、新株予約権原簿に記載すべき事項を定めています。
記載事項は、発行形態により区分されます。
(1)無記名式新株予約権証券を発行した場合
- 新株予約権証券の番号
- 無記名新株予約権の内容および数
(2)無記名式の新株予約権付社債に付与された新株予約権の場合
- 新株予約権付社債券の番号
- 無記名新株予約権の内容および数
(3)上記以外の場合(記名式・証券不発行等)
- 新株予約権者の氏名および住所
- 新株予約権の取得日
- 新株予約権証券または新株予約権付社債券の番号(発行している場合)
- 新株予約権の内容および数
実務上は、③のケースが大多数です。
5.「新株予約権の内容」とは何を指すか
「内容」とは、発行決議により定められた事項を指します。
具体的には、
- 目的となる株式の種類および数
- 権利行使価額
- 権利行使期間
- 取得条項
- 行使条件
などが該当します。
原簿上は、これらの内容を特定できる形で記載する必要があります。
6.株主名簿との比較
| 項目 | 株主名簿 | 新株予約権原簿 |
|---|---|---|
| 管理対象 | 株主 | 新株予約権者 |
| 権利内容 | 株式 | 将来株式取得権 |
| 法的根拠 | 会社法121条 | 会社法249条 |
両者は別個の法定帳簿であり、代替関係にはありません。
7.実務上の確認ポイント
- 発行時に原簿を作成しているか
- 行使・消滅・譲渡が適時反映されているか
- 潜在株式数と整合しているか
IPO準備企業では、監査対応の場面で原簿整備が確認対象となることがあります。
まとめ
新株予約権原簿は、会社法第249条に基づく法定帳簿です。
新株予約権を発行した場合、遅滞なく作成し、譲渡・行使等に応じて適切に更新する必要があります。
発行設計や登記手続と並行して、原簿管理体制を整備しておくことが、資本政策実務の前提となります。
FAQ
Q1:新株予約権原簿は登記と同時に完結しますか?
いいえ。登記とは別に、会社内部で作成・備置する義務があります。
Q2:ストックオプションも対象ですか?
はい。発行形態を問わず、新株予約権である限り対象です。
Q3:様式は法律で決まっていますか?
様式の指定はありませんが、会社法の記載事項を満たす必要があります。
