作成義務と記載内容を解説
ストックオプション(新株予約権)を発行した企業が見落としがちな法的義務の一つに、「新株予約権原簿(しんかぶよやくけんげんぼ)」の作成・備置があります。
本稿では、新株予約権原簿の法的根拠、作成義務の範囲、そして実務上の記載事項についてわかりやすく解説します。
1. 新株予約権原簿とは?
新株予約権原簿とは、会社が発行した新株予約権に関する情報を一覧で記載・管理する帳簿です。
これは、株主名簿と同様に会社法上で備え付けが義務付けられている帳簿類の一つです。
2. 作成義務の法的根拠
【根拠条文】
- 会社法第252条
→ 株式会社は、新株予約権原簿を作成し、本店に備え置く義務がある。
この義務は、公開会社・非公開会社を問わずすべての株式会社に適用されます。
つまり、スタートアップ企業や同族会社であっても、ストックオプションを発行した場合は、新株予約権原簿を作成・備置しなければなりません。
3. 新株予約権原簿の記載事項
新株予約権原簿に記載すべき事項は以下のとおりです。
記載項目 | 内容 |
---|---|
1. 新株予約権の目的たる株式の種類および数 | 普通株式○株など |
2. 新株予約権の数 | 例:100個など |
3. 権利行使期間 | 例:2025年6月1日~2030年5月31日 |
4. 行使価額(1株あたりの払込金額) | 例:1株につき100円 |
5. 発行日および割当日 | 株主総会日・割当日を明確に |
6. 新株予約権者の氏名・名称および住所 | 各権利者について明記 |
7. その他必要事項 | 譲渡制限の有無など契約特記事項等 |
原則として、予約権ごとに1件ずつ記録し、常に最新の状態に維持する必要があります。
4. 実務における注意点
- 原簿は紙媒体でも電子ファイルでも作成可能ですが、確実に保存・更新できる体制が必要です。
- 権利者がストックオプションを譲渡する場合や相続が生じた場合にも、速やかに記載内容を変更しなければなりません。
- 閲覧請求があった場合には対応義務があるため、整備されていない場合は会社の信頼性やコンプライアンス上の問題となり得ます。
5. まとめ
- ストックオプションを発行した会社は、必ず「新株予約権原簿」を作成・備置する義務があります。
- 記載すべき内容は、会社法施行規則で詳細に定められており、発行時から正確に管理することが求められます。
- 原簿の未整備は、将来的な紛争や税務調査において重大なリスクとなるおそれがあります。
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