ストックオプション(SO)には「無償」と「有償」があります。
無償SOは従業員インセンティブに広く使われますが、近年は有償ストックオプションを導入する企業も増えています。
ここではその仕組みと会計処理上の留意点を整理します。
1. 有償ストックオプションとは
- 付与対象者が発行時に払込金額を支払って取得する新株予約権
- 払込金額は、一般的に算定された「公正価額」に基づく
- 税務上は「金融商品」として扱われ、行使時には給与課税が生じない
2. 無償SOとの比較
項目 | 無償SO | 有償SO |
---|---|---|
取得時 | 無償 | 公正価額を払込 |
行使価額 | 契約時の株価以上 | 契約時の株価以上 |
課税タイミング | 行使時+売却時(非適格の場合) | 売却時のみ(譲渡所得課税) |
インセンティブ性 | 高い | 払込必要でやや限定的 |
会計処理 | 株式報酬費用として計上 | 発行価額と公正価額の差額を費用計上 |
3. 会計処理
- 発行時
- 付与対象者からの払込金額は「新株予約権」勘定に計上
- 公正価額と払込金額が一致すれば費用計上はなし
- 差額がある場合
- 公正価額 > 払込金額 → 差額部分を「株式報酬費用」として計上
- 公正価額 ≦ 払込金額 → 費用は発生しない
→ 実務上は「公正価額での発行」を行うことで、費用計上を回避するケースが多い。
4. 実務上のメリットと留意点
メリット
- 課税上、行使時に給与課税が生じない → 受益者の税負担を抑制
- IPO後の売却時のみ20.315%課税
- 公正価額で発行すれば会社側の費用計上リスクが軽減
留意点
- 払込を必要とするため、従業員へのインセンティブ性は無償SOに比べ弱まる
- 発行価額の算定根拠を客観的に用意することが必須(外部算定機関の評価等)
まとめ
有償ストックオプションは、行使時の給与課税を回避できる制度設計として有効です。
一方で、払込が必要なため導入ハードルが高く、インセンティブ効果は無償SOに比べ限定的です。
IPO準備企業では、無償SOと有償SOを組み合わせ、対象者や税務メリットに応じた制度設計を行うのが一般的です。