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未上場企業におけるストックオプション会計の簡便法はどこまで許されるのか

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会計処理・税

未上場企業がストックオプション(新株予約権)を導入する場合、
会計実務上、「簡便法が使えるかどうか」は確認される論点です。

とくに、

  • 評価コストを抑えたい
  • 会計処理をできるだけ単純にしたい

といった事情から、
簡便法が前提で検討されるケースも少なくありません。

本コラムでは、
未上場企業に認められている簡便法の内容と、その適用範囲の限界を整理します。

1. 簡便法が認められている理由

会計基準では、原則として、

  • ストックオプションの公正な評価額
    (=本源的価値+時間価値)

を基礎として費用計上を行うこととされています。

一方、未上場企業の場合、

  • 市場価格が存在しない
  • 株価変動性等の算定が困難

といった事情があり、
公正な評価額の算定が実務上大きな負担となります。

このため、一定の場合に限り、
本源的価値のみで会計処理を行う簡便的な取扱いが認められています。

2. 簡便法の内容は「評価対象の限定」

簡便法において簡略化されているのは、
費用配分の考え方そのものではなく、評価の対象です。

  • 原則
    → 公正な評価額を対象勤務期間に配分
  • 簡便法
    → 本源的価値を対象勤務期間に配分

ここでいう本源的価値とは、

  • 算定時点の自社株式の評価額
  • から、行使価格を控除した差額

を指します。

3. 簡便法を用いても「費用配分」は省略できない

実務で誤解されやすい点として、

  • 簡便法=会計処理が不要

という理解がありますが、
これは会計基準の整理とは異なります。

簡便法を用いた場合でも、

  • 本源的価値が正であれば
    → その金額を対象勤務期間に配分して費用計上

する必要があります。

結果として、

  • 行使価格が株式評価額以上
    → 本源的価値がゼロ
    → 費用が発生しない

というケースが生じるにすぎません。

4. 簡便法が使えなくなる典型的な場面

簡便法は、
未上場であることを前提とした特例です。

したがって、次のような場面では注意が必要です。

  • 上場を前提とした監査対応が始まる場合
  • 上場企業またはその子会社となる場合
  • 会計方針として簡便法が合理的でないと判断される場合

このような場合には、

  • 公正な評価額による処理
    への切替えが求められる可能性があります。

5. 簡便法とIPO準備との関係

IPO準備に入ると、

  • ストックオプションの過去処理
  • 費用計上の妥当性

について、監査の観点から確認が行われます。

簡便法自体は会計基準に基づく正当な取扱いですが、

  • なぜ簡便法を採用したのか
  • その前提条件は満たされていたか

といった点について、
説明可能性が求められることになります。

6. 実務で押さえておくべき整理

簡便法を用いる場合、
次の点は最低限整理しておく必要があります。

  • 未上場企業であること
  • 本源的価値の算定根拠
  • 行使価格と株式評価額の関係
  • 対象勤務期間への配分方法

簡便法は、
会計処理を省略する制度ではなく、評価方法を限定する制度である点が重要です。

まとめ

  • 簡便法は未上場企業に限って認められる特例
  • 簡略化されるのは評価対象であり、費用配分ではない
  • 本源的価値がゼロであれば結果として費用は発生しない
  • IPO準備段階では説明可能性が重要となる
  • 簡便法は「使えるから使う」ではなく、前提確認が不可欠

未上場企業におけるストックオプション会計の簡便法は、
負担軽減のための制度であって、万能な免除規定ではありません。
その位置づけと限界を正確に理解したうえで運用することが、実務上の前提となります。

※本コラムは、企業会計基準および適用指針に基づく一般的整理を目的としています。
個別具体的な会計処理については、監査法人・会計専門家への確認が必要です。

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