ストックオプション(SO)の発行にあたっては、株価算定と行使価額の設定が密接に関係します。
特に税制適格SOでは、「付与契約時の株価以上で行使価額を設定すること」が要件であるため、どのように株価を算定するかが重要になります。
1. 株価算定の目的
株価算定は、SOの公正な発行価額や行使価額を設定するために行われます。
上場企業の場合は市場株価を基準としますが、非上場企業では市場価格が存在しないため、
財産評価基本通達に基づく評価方法を用います。
2. 株価算定の方法
非上場企業の株価算定は、主に以下の3つのアプローチで行われます。
- インカム・アプローチ(DCF法など)
将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算定。 - マーケット・アプローチ(類似会社比較法など)
類似上場企業の株価指標を参考に算定。 - ネットアセット・アプローチ(純資産法など)
貸借対照表上の資産・負債を基に算定。
算定目的や企業のステージに応じて、複数の方法を組み合わせて評価することもあります。
3. セーフハーバールールの明確化
2023年7月、国税庁のQ&Aにより、
税制適格ストックオプションの行使価額要件を満たす株価の算定方法として、
「財産評価基本通達の例(純資産額等による算定)」を選択できることが明確化されました。
この「セーフハーバールール」により、
資金調達後に時価評価額が上昇しても、純資産額等による株価を行使価額の下限として設定できます。
優先株式を発行している場合には、残余財産の優先分配権を反映し、普通株式の評価を個別に算定することが求められます。
4. 会計上の取扱い
税務上の行使価額設定に「特例方式(セーフハーバー)」を用いる場合、
会計上の株価(公正価値)との乖離が生じることがあります。
この場合、公正価値と行使価額との差額部分(本源的価値)を株式報酬費用として計上する必要があります。
5. 実務上の留意点
- 株価算定の根拠資料(算定書・評価表)は必ず保存する。
- 税制適格SOを発行する場合、行使価額が算定株価を下回らないよう注意。
- 会計上は、税務上の評価と別に「公正価値評価」を行い、PL影響を事前にシミュレーションする。
まとめ
ストックオプションの行使価額は、株価算定の正確性と透明性により支えられています。
税務では「セーフハーバールール」により柔軟な株価設定が認められましたが、
会計上は公正価値との乖離による費用計上リスクもあるため、
税務・会計・法務の三面で整合性を確保することが重要です。
ストックオプションに関するご依頼・ご相談は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。