本稿では、会社法上の構造差という観点から、株式報酬制度とストックオプション(新株予約権)を比較します。
制度選択を誤ると、
・決議手続の瑕疵
・有利発行規制違反
・報酬規制違反
といったリスクが生じ得ます。構造理解は前提です。
1.株式報酬制度は会社法上「株式発行」か「自己株式処分」
株式報酬制度(RS等)は、法的には次のいずれかに該当します。
- 新株発行
- 自己株式の処分
根拠条文
- 会社法199条(募集株式の発行等)
- 会社法201条以下
役員に付与する場合は、さらに
- 会社法361条(取締役の報酬)
の枠内整理が必要です。
つまり株式報酬は、「株式」そのものの発行行為です。
そのため、
- 直ちに株主となる
- 議決権が発生する
- 持分希薄化が即時に発生する
という特徴があります。
2.ストックオプションは会社法上「新株予約権の発行」
一方、ストックオプションは会社法上の**新株予約権(会社法238条以下)**です。
法的構造は次の二段階です。
① 新株予約権の発行
② 権利行使による株式取得
この二段階構造が、株式報酬制度との本質的な違いです。
付与時点では
- 株主ではない
- 議決権はない
- 希薄化は潜在的
権利行使時に初めて株式が発行されます。
3.有利発行規制の観点からの違い
(1)株式報酬の場合
株式を時価より低い価額で発行すれば、有利発行(会社法199条3項)に該当します。
したがって、
- 株主総会特別決議
- 有利発行理由の説明
が必要です。
無償交付は原則として有利発行と評価され得ます。
(2)ストックオプションの場合
新株予約権も、有利な条件で発行すれば
会社法238条3項により特別決議が必要となります。
特に「株式報酬型(1円SO)」は、有利発行該当性の検討が不可欠です。
4.報酬規制(会社法361条)との関係
役員に付与する場合は、いずれの制度でも報酬決議が必要です。
株式報酬
- 交付株式の数または算定方法を決議
- 上限枠設定が実務上一般的
ストックオプション
- 新株予約権の内容を決議
- 有償SOの場合は報酬該当性の整理が必要
「有償だから報酬ではない」とは直ちにはいえません。
実質判断が重要です。
5.希薄化タイミングの違い
| 制度 | 希薄化発生時期 |
|---|---|
| 株式報酬 | 株式交付時 |
| ストックオプション | 権利行使時 |
IPO準備企業では、潜在株式比率管理の観点から重要な論点です。
6.退職時処理の構造差
株式報酬
- 既に株主
- 買取条項設計が不可欠
- 会社法上の自己株取得手続が問題となる
ストックオプション
- 行使条件に「在職要件」を設定可能
- 退職時失効設計が比較的容易
この点は、実務上大きな差になります。
7.実務上の判断軸
会社法構造から整理すると、次のようにいえます。
株式報酬が向くケース
- 株主意識を早期に持たせたい
- 議決権を付与したい
- 上場企業でガバナンスを強化したい
ストックオプションが向くケース
- IPOインセンティブ設計
- 潜在的希薄化で管理したい
- 退職時コントロールを重視
8.まとめ
株式報酬制度とストックオプションは、
見た目は似ていますが、
- 株式発行か
- 新株予約権発行か
という会社法上の構造が根本的に異なります。
制度選択は、
- 有利発行規制
- 報酬規制
- 希薄化管理
- 退職時処理
- 税務影響
を横断的に整理したうえで行う必要があります。
ストックオプション・株式報酬制度は、
単なる人事制度ではなく、資本政策そのものです。
導入前の法的整理が、後戻りできないリスクを防ぎます。
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