ストックオプション(新株予約権)の会計処理のうち、
実務で最も説明が求められるのが「権利確定日前」の期間です。
この期間は、
- まだ権利が確定していない
- それでも費用計上は進めなければならない
という、直感とずれやすい局面にあたります。
本コラムでは、
権利確定日前に行われる会計処理について、
「何を見積り、何を固定するのか」という観点から整理します。
1. 権利確定日前の会計処理の基本的な考え方
企業が従業員等にストックオプションを付与した場合、
会計上は、次の関係が前提になります。
- 企業は、従業員等から労働サービスを受け取っている
- その対価として、ストックオプションを付与している
このため、会計基準では、
- 取得した労働サービス
→ 費用として認識 - その対応額
→ 純資産の部に「新株予約権」として計上
する整理が採られています。
ここで重要なのは、
「権利が確定したかどうか」ではなく、「サービスを受け取っているかどうか」
が、費用計上の出発点になっている点です。
2. 各会計期間に計上する費用はどう決まるのか
費用配分の基本構造
権利確定日前に計上される費用は、
次の考え方に基づいて算定されます。
- ストックオプション全体の評価額
- それを対象勤務期間にわたって配分
- 当期に対応する部分を費用計上
この「全体の評価額」は、
- 公正な評価単価
- に、対象となるストックオプション数を乗じて
算定されます。
3. 権利確定日前に見積るべき3つの要素
権利確定日前の会計処理では、
次の3点について整理が必要になります。
(1) 公正な評価単価
公正な評価単価は、
- 付与日に一度だけ算定
- 原則として、その後は見直さない
という扱いが採られます。
このため、
権利確定日前の各期において、
評価単価そのものを再計算することはありません。
(2) ストックオプション数
一方で、
ストックオプション数については見積りの対象となります。
具体的には、
- 将来、権利不確定により失効すると見込まれる数
を控除した数量を基礎として、
費用配分が行われます。
この数量見積りは、
権利確定日までの間、状況に応じて見直されます。
(3) 費用配分の方法
費用は、
- 対象勤務期間
- その他の合理的な方法
に基づいて配分されます。
一般的には、
勤務期間に応じた期間按分が用いられますが、
重要なのは、一貫した合理性が確保されていることです。
4. 「見積らないもの」も決まっている
権利確定日前の会計処理では、
見積りの対象にならない事項も明確に定められています。
代表的なものが、
- 公正な評価単価そのもの
- 算定技法の恣意的な変更
です。
評価単価は、
付与日時点の条件を前提として固定され、
後から結果を見て調整することは想定されていません。
5. 公正な評価単価はどのように算定されるのか
ストックオプションは通常、
市場で自由に取引されていないため、
市場価格を直接参照することはできません。
このため会計基準では、
- 株式オプションの価値評価として
- 実務上広く受け入れられている算定モデル
を用いることが前提とされています。
算定にあたっては、
- 行使価格
- 想定される期間
- 株価水準
- 株価変動性
- 配当や割引率
といった要素が考慮されます。
ただし、
失効見込みについては評価単価ではなく数量で調整する
という点が、会計上明確に切り分けられています。
まとめ
- 権利確定日前でも、労働サービスに対応して費用は計上される
- 見積るのは「数量」と「配分」、評価単価は原則固定
- 公正な評価単価は付与日基準で算定される
- 失効見込みは評価単価ではなくストックオプション数で反映
- 権利確定日前の処理は「将来確定する権利」を前提にした整理
権利確定日前のストックオプション会計は、
不確実性がある中で、何を固定し、何を見積るかを厳密に分けている点に特徴があります。
この切り分けを理解することが、実務対応の前提となります。
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