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特例方式による未上場株式の評価とは?税制適格ストックオプションの権利行使価額算定における実務上のポイント

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新株予約権(SO)

税制適格ストックオプション(以下、適格SO)の設計において、「行使価額の設定が要件を満たしているか」は極めて重要な論点です。
特に未上場企業の場合、「取引相場のない株式」の株価評価が必要となりますが、その算定方式としては、原則方式・特例方式(いわゆるセーフハーバー)の2つが明示されています。

本稿では、2023年に国税庁が公表した「ストックオプションに対する課税Q&A(問7)」を踏まえ、特例方式の適用内容と種類株式発行企業での留意点について整理します。

評価方式の分類―原則方式と特例方式

● 原則方式(同族株主等に付与される場合)

未上場株式を保有する同族株主にSOを付与する場合、所得税基本通達に基づく原則的評価方式を採用します。
評価方法は以下の通り、会社の規模に応じて異なります。

会社規模採用される評価方法
大会社(上場並)類似業種比準方式(または純資産価額方式)
中会社併用方式(または純資産価額方式)
小会社純資産価額方式(または併用方式)

※類似業種比準方式:類似上場会社の株価指標に基づく評価
※純資産価額方式:時価ベースでの資産評価に基づく方式

● 特例方式(同族株主等以外に付与される場合)

非同族株主(社員・顧問等)に付与する場合には、財産評価基本通達の例による「配当還元方式」等の特例方式を選択することが可能です。
これにより、株式評価額を相対的に低く抑え、権利行使価額のハードルを緩和することができます。

※「株価<行使価額」であれば税制適格要件を満たす
※配当を行っていない場合でも、最低配当2.5円で評価可(通達ベース)

特例方式を選択する場合の実務留意点

● 1. 同族性の取り扱い

評価対象者が発行会社の「中心的な同族株主」(通達188(2))に該当する場合、会社は自動的に「小会社」とみなされ、純資産価額方式または併用方式によって評価しなければなりません。

● 2. 特定資産保有時の取扱い

発行会社が、土地・上場有価証券を保有している場合は、それらの資産については付与契約時点の価額で評価する必要があります。(通達185)

● 3. 法人税等控除の禁止

株式評価額の計算において、評価差額に対する法人税相当額の控除は行わないという取扱いが示されています(通達186-2)。
これにより、純資産価額の過度な引き下げを防ぎ、適正な評価額を維持する狙いがあります。

種類株式発行会社における評価の実務

スタートアップ企業では、J-KISSや優先株式の発行を行っているケースが多く見られます。これらの企業が適格SOを付与する際は、普通株式の価額を別途算定する必要があります。

● 1. 普通株式の個別評価が必要

優先株式に残余財産の分配権が設定されている場合、普通株式の評価にあたっては、その分配権分を差し引いたうえで残余の純資産をプロラタ(発行済株式数比率)で割り振る方式が採られます。

● 2. 評価基準日(算定基準)の取り扱い

以下のようなケースでは、契約時点での仮決算を組む必要があります。

  • 直前期末から6カ月超経過し、かつ純資産価額が2倍以上増加している場合
  • 期末以降に株式発行がある場合(ただしこの場合、増資分を純資産に加算して算定可)

● 3. 普通株式評価額がマイナスの場合

仮に評価上、普通株式の価値がマイナス(=債務超過)となった場合でも、ストックオプションの行使価額は「備忘価額1円以上」で設定する必要があります。

J-KISS型など優先分配新株予約権の位置づけ

J-KISSなど、残余財産の優先分配を受けることができる新株予約権については、税務上「優先株式と同様に取り扱って差し支えない」とされています。
これにより、普通株式評価額を引き下げる余地が生じる一方、会計費用や投資家間調整の観点から慎重な設計が求められます。

評価対象となる発行済株式数の判定

  • 基準時点はSOの付与時点
  • 非参加型の優先株式しか分配対象でない場合は、普通株式の発行済数のみを分母に使用

特例方式活用は“要件充足+会計整合”の視点で

特例方式による評価手法は、税務上の要件を満たすための柔軟な選択肢となりますが、評価誤り・要件逸脱が生じた場合、税制適格性を喪失し、行使時に最大55%の課税が発生するリスクを伴います。
さらに会計上は公正価値との差額を費用計上する必要があるため、「税務上の評価額」=「会計上の評価額」とならない点にも注意が必要です。

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