監査役にストックオプション(新株予約権)を付与すること自体は、会社法上可能です。
しかし実務では、次の3点を正確に整理しないまま進めると、手続違反やガバナンス上の問題を生じかねません。
- 有償ストックオプションであれば報酬規制は回避できるのか
- 監査役への付与は有利発行に該当するのか
- 株主総会決議は具体的に何が必要なのか
本稿では、この3点を中心に制度整理を行います。
1.監査役に有償SOを発行する場合、報酬規制は本当に回避できるのか?
(1)報酬規制の基本構造
監査役の報酬は、会社法387条により、
- 定款
- または株主総会決議
によって定めなければなりません。
ストックオプションが「職務執行の対価」と評価される場合は、監査役報酬に該当します。
(2)無償付与の場合
無償で新株予約権を付与する場合、経済的利益が無償で供与されるため、
原則として報酬に該当します。
したがって、
- 監査役報酬としての株主総会決議
- または既存報酬枠の範囲内での整理
が必要になります。
(3)有償ストックオプションの場合
時価で新株予約権を発行し、監査役が公正価値を払い込む場合は、
経済的利益の供与とは整理されません。
そのため、一般には
- 「報酬」ではなく
- 「投資」と整理される
ことになります。
この整理に立つ限り、会社法387条の報酬規制の対象外と考えられます。
ただし前提となるのは、
- 公正価値で発行していること
- 有利発行に該当しないこと
です。
時価評価が適切でない場合には、実質的に報酬と評価される可能性があります。
2.監査役へのSO付与は有利発行になるのか?
(1)有利発行の判断基準
会社法上、新株予約権を「特に有利な条件」で発行する場合には、
株主総会の特別決議が必要です。
判断のポイントは、
- 払込金額が公正価値を下回っていないか
にあります。
(2)無償付与の場合
無償発行は、通常、経済的利益を無償で供与することになります。
そのため、
- 有利発行に該当する可能性が高い
- 特別決議が必要となる場面が多い
と整理されます。
(3)有償(時価発行)の場合
第三者評価等に基づき、公正価値で発行する場合は、
原則として有利発行には該当しません。
したがって、
- 特別決議は不要
- 通常の発行手続で足りる
と整理されます。
ただし、評価算定の妥当性が前提です。
3.監査役にSOを付与する場合の株主総会決議の具体的整理
監査役への新株予約権発行では、「何の決議が必要か」を正確に分解する必要があります。
ケース別整理
| ケース | 報酬決議 | 有利発行特別決議 | 発行決議(非公開会社) |
|---|---|---|---|
| 無償付与 | 必要 | 必要となる可能性高い | 必要 |
| 有償(時価) | 原則不要 | 原則不要 | 必要 |
| 有償だが時価未満 | 必要となる可能性 | 必要 | 必要 |
非公開会社の場合
非公開会社では、募集新株予約権の発行自体に株主総会決議が必要となる場面が多くあります。
したがって、有償であっても、
- 「報酬決議は不要」
- しかし「発行決議は必要」
という整理になります。
4.実務上の設計ポイント
監査役への付与では、次の点を明確にしておく必要があります。
- 有償か無償かの整理
- 公正価値算定の根拠
- 有利発行該当性の検討資料
- 監査役報酬枠との関係整理
- 株主総会議案の文言設計
- 登記対応(発行後2週間以内)
特にIPO準備企業では、
- 独立性との整合性
- ガバナンス説明ロジック
が審査上の論点になります。
まとめ
監査役へのストックオプション付与は制度上可能ですが、
論点は次の3つに集約されます。
- 有償であれば原則として報酬規制の対象外
- 公正価値であれば有利発行には該当しない
- 非公開会社では発行自体の株主総会決議が必要
設計を誤ると、
- 報酬規制違反
- 有利発行手続違反
- IPO審査上の指摘
につながります。
監査役への付与は、単なるインセンティブ設計ではなく、
会社法・税務・ガバナンスを横断する制度設計の問題です。
論点を分解したうえで、決議構造を整理することが実務上重要となります。
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