ストックオプション(SO)は役員にとって報酬の一形態であり、付与にあたっては「会社法上の新株予約権発行手続」と「役員報酬決定手続」の双方に該当します。
特に監査役にSOを割り当てる場合、取締役会の決議と監査役の協議の二重構造となり、両者の関係がしばしば議論の対象となります。
必要となる二つの決定
① 取締役会の割当決議
- 新株予約権を発行するための必須決議
- 「A監査役に●個、B監査役に●個を割当てる」という形式で決議
② 監査役の協議
- 報酬等の範囲内で、監査役ごとの報酬内容を協議
- 「A監査役に●個、B監査役に●個」と具体的に決める
両者の関係と理論上の矛盾
- 理論上は、取締役会決議と監査役協議で異なる結論となる可能性がある
例:取締役会では「A監査役に5個」、監査役協議では「10個」 - 実務上はそのような齟齬は発生しないが、制度上の整合性に違和感が残る
専門家見解と実務の取扱い
企業法務に詳しい弁護士の見解では、
- 手続の先後関係は会社法上明示されていない
- 新株予約権の発行までに両手続が経ていれば足りる
- 結果が矛盾することは制度上あり得るが、実務では一致させて運用されている
と整理されています。
なぜ両方の手続が必要か
- 取締役会決議は「新株予約権発行のための会社法上の要件」
- 監査役協議は「報酬額を監査役自ら決定する」という独立性確保の要件
- いずれも省略不可であり、二重決定のように見えても両者を経る必要がある
まとめ
監査役にストックオプションを付与する場合、
- 取締役会決議と監査役協議の双方が必要
- 手続の順序は法律で定められていないが、両方が行われていれば適法
- 実務上は「両者の内容を一致させる」ことで矛盾を回避している
つまり、形式的には二重の決議を要するが、決められた手続を省略しないことが最優先と整理できます。