無償ストックオプションとは?税制適格要件とメリット・デメリットを解説

目次

無償ストックオプションとは?税制適格要件とメリット・デメリットを解説

ストックオプションを付与される人が、金銭を払い込むことなく発行できる無償ストックオプションは、様々な企業で採用されています。

本日は、無償ストックオプションの税制適格要件や詳細を解説いたします。

無償ストックオプションは無償で付与できる故に、税制上「給与」とみなされて、権利行使時に給与課税(最高税率55%)が適用されます。しかし「税制適格要件」を満たすことにより、給与課税 (最高税率55%) が適用されないようにすることが出来ます。

税制適格と税制非適格

ストックオプションの発行をするにあたり、一定の要件(租税特別法第29条の2に記載される条件)を満たすことにより、税制面で優遇を受けることできます。この一定の要件を満たしたものを「税制適格ストックオプション」と言います。
一方でこの要件を満たさないストックオプションは、「税制適格ストックオプション」と言われます。

日本におけるストックオプション発行件数で最も多いのは、税制適格ストックオプションである。

税制適格要件

税制面での優遇を受けることが出来る、税制適格ストックオプションの税制適格要件は、租税特別措置法に定める要件で、主には次のとおりです。

(1)対象者の範囲

発行会社及び100%子会社の取締役・執行役・使用人・権利承継相続人であること(租特法第29条の2第1項)
※ただし、上記に該当する場合であっても、その会社の大口株主及び当該大口株主の特別関係者(親族や配偶者など)は、税制優遇の適用を受けることはできません。

大口株主とは、上場会社・店頭売買登録銘柄として登録されている会社においては発行済株式総数の10分の1超を有する者、それ以外の未公開会社については発行済株式総数の3分の1超を有する者をいいます(租特法施行令第19条の3第3項)

社外の人間に付与することが出来ないことはもちろん監査役も除外されていることに注意しましょう。

(2)年間行使限度額

新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間合計額が、1,200万円を超えないこと(租特法第29条の2第2項)

一度でもこの条件から外れた場合、それ以降、年間行使価額がいくらでも税制適格の対象とはならなくなります。IPOなどでキャピタルゲインが大きくなるインセンティブプランの場合はこの要件が障害となる場合があります。

(3)権利行使価額

新株予約権の1株当たりの権利行使価額は、付与契約締結時における株式時価以上であること(租特法第29条の2第1項3号)

発行目的が企業価値向上を意図したインセンティブとしての報酬であるストックオプションにおいて、権利行使価額を付与契約締結時の株式時価未満で設定してしまうと、付与者は、権利行使時点で利益が出るため、本来の目的を満たすことが出来ないため、税制適格対象とはなりません。

付与決議締結時、発行会社の株式時価が100円だった場合において、権利行使価格を100円以下として設計することは出来ません。

(4)権利行使期間

新株予約権の権利行使は、付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと(租特法第29条の2第1項1号)

税制適格要件を満たすことで2度課税されない

税制適格のストックオプションの場合は、権利行使時(株式交付時)に給与課税(総合課税)され、最高税率55%と多額の税金が株式売却前(現金を取得する前)に課税されます。
また、株式売却時には譲渡課税がされますので、税制非適格の場合は、株式交付時と株式売却時の2つのタイミングで税金が発生します。
税制要件を満たすことで、株式売却時(現金取得時)にのみ、譲渡所得課税(20%程)が課されます。
課税のタイミングと税率をみても、税制適格ストックオプションは、税制面で大きな優遇があることは一目瞭然です。

ストックオプション運用中、不本意に税制適格要件から外れてしまい多額の給与課税がされた事例もございますので、税制適格要件には細心の注意が必要です。

税制適格ストックオプションのデメリット

税制面で大きな優遇がうけられる税制適格ストックオプションですが、満たすべき要件も多く運用も複雑であるため、税制適格要件が障害となり使い勝手が悪いという面も持ち合わせています。主なデメリットは次のとおりです。

(1)税制適格要件を満たすすために、付与株式数に限界がある

上述のとおり、権利行使者の権利行使価額の合計額が年間1,200万円以下であるために、大量に付与することができない。また大口株主への付与もできないため、オーナー社長等への付与も難しい

(2)無償であるため従業員への効果が薄い

無料でもらえるため、従業員の中にはそのありがたみが分からなかったり、付与された実感が沸かず、結果として企業価値向上に繋がらない恐れがある。故に、従業員のストックオプションへの理解を深める必要がある。

(3)株主総会決議の報酬決議が必要となる

無償ストックオプションは無償で付与できる故に、付与対象者が取締役の場合、それは「株式報酬」とみなされるため、会社法361条1項に基づき株主総会で報酬決議を得る必要があります
(なお付与対象者に取締役が含まれず従業員のみ場合は、取締役会決議で発行することも可能です。)

上場会社の場合、取締役会決議で有償ストックオプションを発行することが出来ることと比較すると、無償ストックオプションは機動的な発行が難しいというデメリットが存在します。

無償ストックオプションのデメリットを解決する有償ストックオプション

上記デメリットをクリアするために「有償ストックオプション」が開発されました。

→有償ストックオプションについては、こちら

まとめ

本日は、無償ストックオプションのメリット・デメリット、税制適格要件などについて簡潔にまとめました。
税制適格要件を満たすかにより税制面で大きく異なり、税制適格要件を満たすかについては、その最低限の知識と法務・会計・税務の理解が必要不可欠となりますので経験豊富な専門家に相談しましょう。
ストックオプションの発行をご検討中の方やストックオプションの設計に疑問をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次