税制適格ストックオプションは、一定の要件を満たすことで、権利行使時の給与課税を繰り延べられる制度です。しかし、その要件を一度でも満たさなくなると、税制非適格ストックオプションとして取り扱われることになります。
本記事では、税制適格SOが税制非適格に転じる代表的なケースと、その取扱い上の注意点を整理します。
※本記事は一般的な制度説明であり、個別の税務判断は税理士など専門家への確認が必要です。
1 税制適格SOは「要件を満たし続けること」が前提
税制適格ストックオプションは、租税特別措置法29条の2に基づき、
付与対象者、行使価額、行使期間、行使限度額など、複数の要件を満たすことが前提となっています。
これらの要件のいずれかを満たさなくなった場合、そのストックオプションは 税制非適格ストックオプションとして扱われる ことになります。
2 最も典型的な非適格化のケース
年間の権利行使価額が1,200万円を超えた場合
年間権利行使価額1,200万円の超過 について。
税制適格SOでは、
1年間に行使できる権利行使価額の合計が1,200万円以下
であることが要件とされています。
(1)超過部分のみが非適格になるわけではない
ここで重要なのは、取扱いが次のようになる点です。
- 1,200万円を超えた「超過部分」だけが非適格になるのではない
- 当該年に行使した権利行使分全体が税制非適格SOとして扱われる
<事例>
- 既に同一年中に1,000万円を行使
- 同年に新たに500万円を行使
この場合、
- 超過額は300万円だが
- 追加で行使した500万円全体が非適格SOと判定される
という扱いになります。
3 一度非適格になると「税制適格には戻れない」
。
一度でも権利行使価額の条件を外れてしまうと、
それ以降の権利行使については、
年間行使価額が1,200万円以下であったとしても、
税制適格ストックオプションの対象に戻ることはできない。
つまり、
- 翌年以降に行使額を抑えたとしても
- 再び税制適格SOとして扱われることはない
という、不可逆的な取扱いがなされます。
4 非適格化した場合の課税関係
税制適格SOが非適格となった場合、その後の課税関係は次のように整理されます。
- 権利行使時
→ 給与所得または退職所得として課税 - 株式売却時
→ 譲渡所得として課税
これは、 税制非適格ストックオプションの課税関係と同一です。
5 まとめ、行使管理を誤ると税務上の取扱いが大きく変わる
本記事では、「税制適格SOが税制非適格に転じる場面」
にテーマを絞って整理しました。
ポイントは次の3点です。
- 税制適格SOは要件を満たし続けることが前提
- 年間1,200万円の行使限度額を超えると、その年の行使分全体が非適格
- 一度非適格になると、再び税制適格に戻ることはできない
税制適格SOを導入している場合、行使タイミングと行使額の管理は極めて重要です。
※本記事は、一般的な制度説明であり、個別の税務判断や税額計算を行うものではありません。具体的な取扱いについては、必ず税理士などの専門家にご確認ください。
お手続きのご依頼・ご相談
本日は、税制適格ストックオプションが税制非適格となる場面と年間1,200万円ルールと再適格不可の注意点について解説しました。
ストックオプションの導入に関するご連絡は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。
