税制適格ストックオプション(SO)は、権利行使時の課税が繰り延べられ、株式売却時のみ譲渡所得として20.315%課税される仕組みです。
令和6年度税制改正により要件が一部緩和され、スタートアップを中心に利用しやすくなりました。
1. 基本要件(改正後)
- 無償発行
- 対象者:会社および子会社の役員・従業員等(大株主やその親族は除外)+社外高度人材(範囲拡大)
- 権利行使期間:付与決議日から2年経過後〜10年以内
(非上場かつ設立5年未満の場合は15年まで可) - 年間行使価額上限:最大3,600万円(改正前は1,200万円)
- 行使価額:契約締結時の株価以上
- 譲渡禁止
- 保管要件:証券会社等による管理 or 発行会社による管理(譲渡制限株式に限る)
2. 改正のポイント
- 年間行使価額上限の引上げ
- 設立5年未満:2,400万円
- 設立5年以上20年未満(非上場 or 上場から5年未満):3,600万円
- 設立20年以上 or 上場から5年以上:1,200万円据え置き
- 株式管理方法の選択制
- 従来は証券会社での保管必須
- 改正後は、発行会社自身による管理も認められる(譲渡制限株式の場合)
- 社外高度人材の範囲拡大
- 教授・准教授、上場企業役員・重要な使用人(1年以上)、未上場企業役員等も対象に追加
3. 実務での留意点
- 株主総会決議との整合性:改正前に発行したSOは、2024年12月末までに契約変更を行えば、上限引上げ・自社管理を適用可能
- 会計処理:セーフハーバー(純資産価額評価)を用いた場合、行使価額と時価の差額は「株式報酬費用」として計上が必要
- 対象者管理:税制適格と非適格が混在する場合、対象者ごとに契約内容を整理
4. 税務・会計への影響
- 税務:適格SOは行使時に課税なし、売却時のみ譲渡所得課税
- 会計:公正価値を株式報酬費用として計上(未上場企業は差額部分の費用化リスクに注意)
まとめ
令和6年度改正により、税制適格ストックオプションは
- 年間行使価額の上限拡大
- 保管要件の緩和
- 社外高度人材の範囲拡大
と、スタートアップの人材確保・資本政策に使いやすくなりました。
ただし、税制要件の充足と会計処理の整合を怠ると、適格性を喪失し、重課税リスクを抱えることになります。
発行前に、法務・税務・会計を横断して検証することが不可欠です。
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