ストックオプション(SO)は、制度設計によって「税制適格」と「税制非適格」に分かれ、課税関係やインセンティブ効果に大きな違いが生じます。
ここでは両者の仕組みを整理し、実務上の留意点を確認します。
1. 税制適格SOの仕組み
- 課税タイミング:株式売却時のみ
- 課税区分:譲渡所得として一律20.315%
- 要件(抜粋)
- 無償発行
- 付与対象は会社および子会社の役員・従業員等(大株主は除外)
- 行使価額は契約時の株価以上
- 権利行使期間は2年経過後〜10年以内(非上場5年未満会社は15年まで可)
- 譲渡禁止
- 保管要件:証券会社等または発行会社自身による管理(令和6年度改正後)
- 年間行使価額の上限は最大3,600万円
→ 行使時には課税されず、株式売却時のみ課税となるため、税負担は軽く、インセンティブ効果が大きい。
2. 税制非適格SOの仕組み
- 課税タイミング:①権利行使時、②株式売却時の2段階
- 課税区分:
- 権利行使時 → 給与所得(累進課税 最大55.945%)
- 売却時 → 譲渡所得(20.315%)
- 要件:特段の制約なし(対象者・発行条件を柔軟に設計可能)
→ 設計自由度は高いが、税負担は重くなる。
3. 適格SOと非適格SOの比較
項目 | 税制適格SO | 税制非適格SO |
---|---|---|
課税タイミング | 株式売却時のみ | 行使時+売却時 |
課税率 | 譲渡所得20.315% | 給与所得(最大55.945%)+譲渡所得20.315% |
発行条件 | 法定要件あり | 自由度が高い |
対象者 | 社内役職員+社外高度人材(改正後) | 社外協力者含め柔軟に設計可能 |
メリット | 税優遇が大きい | 設計柔軟性が高い |
デメリット | 要件充足が必須 | 税負担が重い |
4. 実務上の使い分け
- 税制適格SO:役員・従業員への中長期的インセンティブに最適
- 税制非適格SO:社外アドバイザーや取締役、大株主等、適格要件に当てはまらない対象者への付与に活用
まとめ
税制適格SOは税務メリットが大きい一方、要件を満たさない場合は自動的に非適格となります。
IPO準備企業では、適格と非適格を併用し、対象者や目的に応じて制度設計することが一般的です。
制度導入時には、税務・会計・法務の観点からバランスの取れたプランニングが不可欠です。