税制非適格ストックオプション(1円SO)は、インセンティブ設計の柔軟性がある一方で、導入にあたって必ず認識すべきデメリットが3つ存在します。
本記事では、この3つのデメリットを、専門的な解説としてまとめます。
※本記事は一般的説明であり、個別の税務判断は税理士など専門家への相談が必要です。
1 デメリットは大きく3つ
税制非適格SOのデメリットは次の3点です。
- 課税が2回発生すること
- 税率が高いこと
- キャッシュインがないのに税金の支払いが先行すること
それぞれ順に見ていきます。
2 デメリット①
課税が2回発生する
税制適格SOや有償SOでは、課税のタイミングは原則 「株式売却時」 の1回です。
しかし税制非適格SOは、次の2段階で課税されます。
- 権利行使時(給与所得または退職所得)
- 株式売却時(譲渡所得)
この2回課税が、税制非適格SOの最も象徴的なデメリットとされています。
3 デメリット②
税率が高い(最大約55%)
税制適格SOの場合、株式売却益は一律約20%の申告分離課税です。
これに対し、税制非適格SOは、
- 権利行使時:給与所得として総合課税(最大約55%)
- 株式売却時:譲渡所得として約20%
となるため、行使時に極めて高い税率が適用される可能性があります。
税制非適格SOのデメリットとして、課税が2回あるだけでなく、税率が高いことも挙げられます。
給与所得としての課税には総合課税が適用され、税率が最大で約55%となります。
なお、退職型1円SOとして設計した場合には退職所得扱いとなり、税負担が軽減される点もこれはデメリットを緩和する仕組みであり、制度の本質的なデメリットが消えるものではありません。
4 デメリット③
キャッシュイン前に税金の支払いが先行する
税制非適格SOでは、権利行使時に株式を取得した段階で所得税が発生します。
しかしこの時点では、
- 株式を取得しただけで
- 売却による現金収入(キャッシュイン)がまだない
という状態です。
したがって、手元資金がないまま税金だけ先に発生するという、個人側にとって深刻な資金繰りリスクがあります。
5 まとめ、税制非適格SOの導入にはデメリットの理解が不可欠
税制非適格SOのデメリットは、次の3つに集約されます。
- 課税が2回発生すること
- 税率が高いこと
- キャッシュインがない段階で税金が発生すること
これらは税制適格SOには存在しない特徴であり、制度選択に大きく影響します。
税制非適格SOは、柔軟な設計が可能である反面、これらのリスクを十分理解したうえで利用することが不可欠です。
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