税制非適格ストックオプション(1円SO)は、権利行使時に給与所得課税が生じるなどのデメリットがある一方、税制適格SOよりも制度設計に柔軟性がある点が特徴です。
本記事では、税制非適格SOのメリットを解説します。
1 税制非適格SOのメリットは大きく2つ
税制非適格ストックオプションのメリットは次の2点です。
- 権利行使価額1,200万円の上限がない
- 権利行使期間の法的制限(2年~10年)がない
この2点により、税制適格SOよりも自由度が高い制度設計が可能になります。
2 メリット①
権利行使価額1,200万円の上限がない(年間枠なし)
税制適格ストックオプションは、租税特別措置法29条の2により
「1年間に行使できるSOの行使価額は1,200万円以下」
という制限があります。
この制限は、特に株価上昇を見込むスタートアップ・IPO準備企業にとっては、次のような負担となることがあります。
- 将来のキャピタルゲインが大きくなるため、行使枠がすぐ埋まってしまう
- 対象者ごとのインセンティブ設計が硬直化する
- 年度内での行使コントロールが必要になる
一方、税制非適格SOにはこの上限がありません。
そのため、
- 大きな株価上昇を見込む会社
- キーメンバーに手厚いインセンティブを付与したい会社
にとって、柔軟な報酬設計が可能となります。
● 注意点
- 1,200万円を超えた場合、「超えた部分だけ非適格」ではなく
行使した部分の全てが税制非適格SOになる。 - 一度でも1,200万円枠を外すと、その後は適格SOに戻ることができない。
この扱いがあるため、税制適格SOと併用する場合には、行使額管理が特に重要となります。
3 メリット②
権利行使期間(2年~10年)の制限がない
税制適格SOでは、行使期間は法律上次の範囲に限定されています。
- 付与決議から2年後〜10年後の8年間
しかし税制非適格SOについては、このような制限が存在しません。
● そのため実現できる設計例
- 長期間の在籍を前提とした自由な行使期間
- 在籍中はいつでも行使可能
- 逆に「退職時に限って行使可能」という退職型(退職所得扱いの前提)
特に「退職型1円SO」は実務で頻繁に採用されています。
4 税制非適格SOが選ばれる理由(メリット部分から導かれる結論)
以上の2つのメリットにより、税制非適格SOは次のような場面で選択されます。
● 行使枠に縛られず、大きなインセンティブを設定したい
→ 成長企業や上場準備会社で有効
● 権利行使期間を自由に設計したい
→ 長期リテンション(人材の確保)に向いている
● 退職時の報酬を株式価値で付与したい
→ 退職型1円SOにより、退職所得課税の特例が利用できる
5 まとめ
税制非適格SOのメリットは、
- 年間の権利行使価額1,200万円という制限がない
- 権利行使期間に法的な上限・下限がない
という2点に集約されます。
これらの特徴により、税制適格SOでは実現しづらい、柔軟かつ大規模なインセンティブ設計が可能となります。なお、具体的な税務判断や税額計算については、税理士などの専門家にご相談ください。
税制適格ストックオプションの導入をご検討中の方は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。
